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      <title>向日葵 by 木下真三郎</title>
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      <description>真三郎そのものさ</description>
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      <pubDate>2022-05-27 04:53:41 UTC</pubDate>
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         <title>向日葵第一話それは、嵐の夜それは、運命の夜そして、時代の夜明け　セリベ国は、全世界の半分を掌握する大国だった。その土地は作物に富み、気候にも恵まれている国で、今なお領土拡大の最中だった。　現在のセリベの領土は二方を山林に囲まれ、一方を最大規模の川に囲まれ、もう一方を海に囲まれたた天然の要害と化していた。　その国土の端、都心から汚れた空気の流れてくる山林に二人の男女が座り込んでいた。　女の方は、赤子を抱いていたが、とても幸せそうな状況ではなかった。嵐の中、茂みで三人、まるで隠れているようだった。第二話　　時代を閉ざす者......嵐の夜から実に25年後....　セリベ国は世界の殆どを掌握した。その力の根元には強固な政治、軍事体制にあるとされていた。世界には超人的な力を得ることができる、「能力」なるものが存在する。人間一人につき一つの術を得ることでき、その能力を持つものは「能力者」と呼ばれ、能力者が死ぬと、血縁関係を持つものにその能力は継承される仕組みになっている。セリベ国固有の領土にはその力を持つ者が多くいたことから、術を持つものと血縁関係を結ばせることで望んで手に入れられるものではない術を血縁に与えることで唯一無二の恩義をあたえ、絶対的な忠義を持たせることで内政面での憂いをなくし、その力を持って制圧してきた。　そのセリベ国の軍に天才が入ったのは周辺国のほとんどが降伏してきた頃だった。名を木下真三郎という。第三話　　森羅万象　木下真三郎は元々の兵士としての素質、知略、政治力に長けている...そう見抜き、畏怖し、周りに喧伝したのは1つの軍団長である、風魔蘭次（ふうまらんじ）だった。　彼の話をすると...まず、能力は大きく二つに分けられ、変術系と操術系に分けられる。操術系はある一定のものを自在に操る能力のことで、変術系は、自分がそのものに変化する能力のことを表している。例えば、風の能力....彼の能力....だと、自らの体が風そのものに変化させることができる能力のことを指している。　さて、その風の能力は変術系の中でもレアな、夢想系と呼ばれる能力だ。夢想系は実体のない、物に変化できる能力である。　真三郎に彼が目をかけた理由は素質あるだけではなかった。真三郎が、貴重な操術系の能力者だったところに大きな理由はある。能力の名は森羅万象、大自然。これを操る力である。第四話　　　虎、初陣「では、今回の軍容を発表する！大将は炎陣虎勝、貴様だ。」炎陣虎勝少佐は真三郎の直轄指令出来る風魔軍団長を配下に置く方だ。夢想系、焔の能力者。　軍では高い階級を持つものが強い印になっている。だから大将自ら戦うことは半ば当然のこととなっている。炎陣少佐も例外ではない。その夢想系の能力であれば死ぬことは殆どないと言っても過言では無い。　大将が炎陣ならば風魔軍団長が出るのは当たり前。また、真三郎が出るのも当然だ。　今回の戦の目的はほかでもない、領土拡大にある。長年のセリベ国のライバルであった、ラルストア王国だ。しかし、今ではセリベは肥え、ラルストア王国は弱まってしまった。しかし、未だ数多の能力者は多くおり、また民忠も高く、簡単な相手ではない。真三郎はそんな相手との戦いを初陣としたのであ第五話　　時代を創りし者　真三郎にとって、この戦いで一番の結果は、「独り」を脱却出来たことだ。運命の、25年前のあの夜、両親と、その家庭生活を無くし、孤児として育ち、今でも心の拠り所を持つことのできない真三郎は、常に独りだったといっても過言ではないだろう。　さて、真三郎が手に入れたのは、無垢な友情で結ばれた、友だった。その名は大木光と言う。　真三郎は、出陣の為の準備を、軍からもらい受けた部屋でしていた。何しろ初陣、勝てばいいと言っている場合ではない。　武人として生きていくならば、初陣は自分はもちろん人々の記憶にも留まる功績を残すことはとても大切なことだ。　真三郎は初めてなもので、効率は悪いながらも準備を進めていた。すると、開放していたドアからガチャリと、大木光が入ってきた。「君が木下真三郎かい？」「！！？」真三郎は腰が抜けるほどに驚いた。知らない奴から急に声をかけられたら驚くも同然だ。「あっ、あのー...どなた様で？」「まあ誰でも良いじゃないか。さあちょっと話があるからついてきてもらえるかな？」　なされるがままについて行くと、そこは会議室。とはいえ椅子と机が多めにあるだけのただの個室だ。「遅刻は良くないよ、真三郎君。」そこにいた男に注意された。「はっ！！」ここまでいわれてから気付いた。最終確認だ。そこにもうすでに座っていた人達からの冷たい視線を耐えるのに夢中で話の内容が全く入ってこなかった。終了直後、例の光とやらが話しかけてきた。明後日出陣だと。悪いスタートに苦い顔をした真三郎だった。　そして、これが、時代を変えるチームの、一人目との出会いであった。第六話　　神話が為の出陣　恥を堪え忍びながら、真三郎は早めに集合場所に集まった。それでも一番乗りにはなれないという、軍の統率力、競争意欲には驚いたものだった。　その、真三郎より早く来た人の中には例の光とやらの姿もあった。「あっ、あのぉー...随分と早いのですね。何故...」そこまでいうと遮られ、「軍の集合はかけられたらすぐに準備し、たとえどんな期限であろうとすぐに集まるのが常識だ！....とはいえ新人の中でこんなにも早く来たお前には感心だがな」偉そうに喋る光に、別に真三郎は怒りは感じなかった。先輩だからというのもあるだろうが、なにか感じあえるようなものを感じたのもまた事実であった。そこに、先の会議を仕切っていた上級階級と見られる方が現れ、光の話を嘲るようにこういった。「お前も入って２ヶ月だろうが」光は気まずそうに後ろに下がった。どうやらその上官は炎陣少佐のようだ。「すまんな、あいつはああいう性格だから...許してやってくれ。まあ新参者同士仲良くやってくれ」　炎陣少佐がいなくなると、大木光がひょっこり顔を見せた。「すまんな。先輩になれた嬉しさではっちゃけちまった。」全く隠さず全てを話した大木光のことは前々から感じていた親近感も相まって真三郎は好意的に思うようになった。光と共に世間話でもしながら出陣式を乗り越えた。「この出陣はな、真三郎、ある神話に基づいてるらしいぞ」全く何のことか分からない。真三郎は光の話に耳を澄ませた。ーーー600年の昔ーーーある王国は世界を支配しつつあった。その最後の出陣はある少佐に任されていた。王国の上層部の発案である。少佐は実力はあったが、競争相手が多く、なかなか軍勢が集まらない中、少佐はしびれを切らし、わずかな軍勢を率いて出陣した。すると少佐の軍勢は大勝利を納め、王国は統一を成し遂げたのであった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーそして少佐が対象に抜擢されたんだと。」真三郎は全くきにも留めていなかった。ただ、興奮していた。第七話　　轟き真三郎が出陣して３日後...　真三郎達の軍は、既に敵国、ラルストア王国の影響下に入っていた。とは言え戦いは起きていない。ただ、セリベ国の領土外にいるのは確かだ。「ああー、こんなに豊かな、幸せそうな国を襲うのかー、なんだかつらいなー。」光が、真三郎の近くで呟いた。光も初陣。功名に逸りたくなるのは半ば当然のことだろう。実際、真三郎は早く戦いたいと思っていた。そこで光の平和主義的発言である。「いや、この国が壊滅しようとそれはセリベ国に従わなかったこの国の官僚のせいだ。ちゃんと従属化の要請はもうたくさん出しているんだ。」真三郎は自らの心に思っていたことをそのまま言った。光は難しそうな顔をし、「戦はなければ無い方がいいんだ。ただ、それが叶わなければ戦う、それを心に刻んどいた方がいいぞ。最も、お前がただの戦士としてだけ生きていくならば話は別だがな。」真三郎は虚をつかれて黙りこくった。　炎陣少佐の軍は、後少しで街に入れる距離にまで近づいた。しかし、部隊の一つも見えなかったため、未だ戦闘態勢に入っていなかった。そんな中、もし、もしも、横から奇襲をかけられたら、などとは誰も思わなかった。「....!?」ドシーン！　轟音が鳴り響き、軍団の前衛が混乱状態に陥り、それによって真三郎のいる後続部隊も混乱状態に陥ったのは言うまでもない。　近くの町から、殺気が放たれた。第八話　　開戦　炎陣率いる真三郎達の軍は全軍が混乱状態に陥っており、戦うこともままならない状態までになっていた。　そこへ、「余がラルストア王国の長、長光光麟である！貴様らの大将、炎陣虎勝の首をいただく！」と叫び、その数自軍の兵力に匹敵する軍団が襲いかかってきた。「まずいな…」兵法に通じている光がそうつぶやく。いや、兵法がどうあれ、この状態で奇襲を受けるのはなかなかのピンチに陥るのは殆どの人が察せるであろう。「皆、怖じ気つくな！前軍は戦いながら退いてこい！後軍は立て直し、敵に襲いかかるのだ！」炎陣はその統率力で軍を立て直し、後続部隊で戦い始めた。数は奇襲によってうち減らされているが、風魔軍団長の指揮によって何とか戦っている。炎陣は前軍の立て直しを完了させ、横から敵軍を挟みこんで攻撃を始めていた。しかし、味方は浮き足立っている。　「俺らも行かないといけないな、真三郎！」光が突撃していく。普段は冷静に戦況を見極めて行くタイプの人間だと思っていたが、案外違ったのかもしれない。「応！」　真三郎は、いつも練習していた短刀2本を持って突撃していった。第九話　　　森羅万象の覇王　真三郎は、自らの能力、森羅万象を使い、上昇気流を起こし、空を飛びながら敵陣に肉薄していった。真三郎ならば天地の理を超越した自然現象を起こすことも可能である。まあ、戦闘そのものにはあまり役立たないが。　無鉄砲な真三郎は敵陣ど真ん中に着地し、闇雲に斬りつけていった。が、敵の装備は鉄の鎧をつけているものが殆どで、なまくらの短刀では打撃以上の何ものでもなかった。　しかし、真三郎も弱くはない。攻撃は出来ぬが、攻撃をまともに食らうことは無かった。「コノヤロー、せっかく鍛えた短剣術も役に立たないじゃないか！仕方ない、能力で戦おうか」　真三郎はまず手始めに、雨を降らせた。実はダイナミックな能力は使ったことがないのである。しかし、意外に効果はあったようだ。「え!?さっきまで快晴だったのに....」　セリベ国の軍は遠征のため雨をしのぐ手だてを持っていたのに対し、ラルストア軍は短期決着を見越していたために、雨を全く想像していなかった。多少混乱させたのは真三郎の手柄だろう。　そのすきに真三郎は幾つか敵を攻撃し、押し込んだ。セリベ軍も退き、形勢を立て直した。しばらく両軍は睨み合い、そしてもう一度、炎陣の炎で戦端は開かれた。第十話　　　戦乙女　　　　　　　　.セリベ軍は能力者4人を抱えながらも数の差は覆しがたく、また、士気も下がるのを止めることは出来なかった。　真三郎はもう一度突撃していき、活路を開こうとした。このときの数の差、約900。　「森羅万象を以て森羅万象を制す...“森羅万象斬”！」　大自然の力をその身に宿し、敵を切り裂く、今の真三郎にとっての大技である。「ドン！」衝撃音がして、一気に十数人を切り裂いた。一振りで、である。敵も何が起こったのかわからないまま倒れていく。一発目を放ってから敵は真三郎を避けていくようになった。もっとも、それでも斬られていくのだが。　ふと真三郎は横を見る。すると光が戦っていた。剣を振るって、いや、氷の刃を振るって戦っていた。よく見ると、光の体そのものが、凍っているように見えた。「おい！」声をかけようとして気づいた。凍っているのではなく、氷になっているのではないか。　真三郎の予想は当たった。敵に腕を斬られても、氷の腕から血がでることはなかったのである。そればかりか、切り口はすぐに再生した。周りには凍った人々が転がっている。　と、光の近くで女と見られる人が戦っているのに気付いた。かなりの精鋭と見られる。「おう、どうした。よそ見してる暇があったら戦えよ」後ろから声がかかる。風魔軍団長だ。「なんです、ちゃんと戦ってますよ！」慌てて前に出ようとするが、敵はいなかった。「ほらな、よそ見だ。どこと戦ってるっていうんだ。...あの女戦士か。名は知らんが、戦乙女とか、戦女神とかっていう異名を取ったらしい。」それだけ言ってさっさと戦場に行ってしまった。そうだ、あの方風の能力者だった、と思いだし、後れをとらぬよう、戦いに行った。そうしながら戦乙女について考えを張り巡らせていた。第十一話　　　消えぬ伝説、光麟　真三郎が、“戦乙女”と話したのは戦いの後ーーつまりこの戦には勝てたーーだった。セリベ軍は結果としては勝利した。いや、完全勝利と言っていいだろう。真三郎が話したのは、その後の陣屋だった。「あの、ちょっと良いか？」真三郎から話しかけのではなく、真三郎は話しかけられた立場にいた。「あ、いいよ。」最初は誰だか分からなかったが、その声の調子で戦場で見かけた、例の戦乙女だということはわかった。が、それで真三郎の態度に変化が訪れることはない。「あの、戦勝祝いに風魔のの配下で打ち上げでもしようって話になってな、来るよな⁉」「ん」真三郎としては行くほかないだろう。それに、同調圧力がなかったとしても、真三郎は快諾したと思う。　それはさておき、翌日、宴会場。　「いやあ、この度は、皆さんお疲れのところ、お集まりいただき恐悦至極です！この宴会は、セリベ国完全勝利の宴も兼ねております！皆さんゆるゆるとお楽しみください！」風魔軍団長の謙虚なお言葉によって宴は始まった。ただ勝っただけにしては風魔軍団長の機嫌がやけにいいなと思いながら、真三郎は思い思いに楽しんだ。　いつの間にか寝てしまったらしい。目を覚ますと辺りは暗かった。寝ようとしたがしかし、騒音で目を覚ました。目をこすりながら騒音のもとへ歩いていった。そこは、明るい部屋だった。電気がついているわけでもない、光源はそのへやにいたひとりの老人だった。　この老人、伝説の名将、正龍光宗と同じ時代に生まれ、真三郎が聞かされた神話の続きにも出てくる武人なのである。光宗が青龍であれば、このラルストア王国王、長光光麟は覇王とも言おうか。　彼は真三郎に脱走しようとしているところを見つかり、観念した様子だった。光も起きたらしく、長光光麟の部屋にやってきた。第十二話　　　三英傑　「報告するなら報告しろ。俺はこんな状況で命乞いなどしないぞ!」確かに命乞いしたいのならばここで大声を出すようなマネはしないだろう。しかも、真三郎にはこの男の衣装に見覚えがあった。他ならぬラルストア王国王族の衣装である。とすれはこんな老人が、かなりの階級の人間だということになる。同時に、そのかなりの階級の人間を捕虜にしていたということにもなる。この戦、正に大勝利。炎陣少佐の言っていたことが理解できたような気がした。「あ、光麟殿。私たちが捕まえていましたか。気付かず申し訳ございません。」光がやけに丁寧にわびの言葉を出す。皮肉に聞こえたが、その眼をみて本心からの言葉だと分かった。尊敬と畏怖の眼である。　「どうだ、若いの。...いや、真三郎殿。我に救いの手を差し伸べてくれないか」突然、光麟が戯れ言を発した。真三郎には逃がしてくれ、としか聞こえなかった。光もそうらしく、「い、いやぁ、そうは言ってもですねぇ...」困惑している。真三郎も黙っていると、「別に逃がさなくてもいい。逃げ道を与えるとか、見逃すとか、見張りの注意を引いておくのもいいな。さあ、どうする。我を待つ者がいるのじゃ。...そいつはかなりの腕利きだ。いずれお主らと行動を共にするかもな、我を救えば。」　全く早とちりな爺さんだ、と二人は顔を見合わせた。　　　　　　　「...三英傑を知っとるか？」第十三話　　　光魂氷　真三郎には、この単語の意味が理解出来なかった。いつもなら多少の推測と共に相槌を打てただろうが、相手が敵の首領であることに動揺するし、相手が変なことを言い出すしで、判断力が著しく低下していた。結局、無言。「まあ、知らずともおかしくはない。何せ30年の昔。その上...いや、止めておこう。魔王サタンが、この世に眠る大きな力を使って世界を手に入れようとしたというお話だ。その魔王サタンを、三英傑...つまるところ三人の能力者達によって倒されたという、いかにも嘘のような話だ。我はな、その中に出てくる子供が如何にもお主に似ていると思ったのだ。30年の後、その大きな力が目覚めると...神話にはある。また、それを止める者の存在もな。...まあ、これでお主が折れるとも我は思っとらん。...お前、その能力、もっと鍛え上げたいと思わんか？その方法、教えて進ぜよう。なに、我は逃がされてもラルストア王国には戻らん。もうすぐ30年。ラルストア王国の民には悪いが、隠居する。」真三郎はその言葉はにわかには信じられなかったが、別段この爺さんが強いとも思えない。教わるのも辞退しつつ、逃がした。　翌日、正気を取り戻し、自分がとんでもないことをしでかしたのに気づいた。謀叛。第十四話　　　疾風迅雷　　真三郎が謀叛を起こしたことは、何とか隠し通せた。何しろ、したくて謀叛を起こしたわけではない。酒の勢い、とでも言おうか。まあ、それで言い訳は出来ないのだが。　翌日、炎陣少佐が捕虜の発表をした。その時の炎陣の動揺っぷりは可哀想なくらいだった。それを見ても、真三郎は後悔をしたものだ。「では、先の戦での最大の成果をお見せいたしましょう！捕虜として、此奴を捕縛出来たことです！」そう景気よく喋り、宴会場の幕をあけようとした。当然と言うべきか、中からは何も現れない。「!?....少しお待ちください！」自首しようものなら殺される。　一週間後軍に、しかも風魔軍団に新進気鋭の武人、しかも能力者が入ってきた。親しみやすい人柄で、頭は武人としてはいいものの、政治力に欠けるという。名は迅雷印銀。　迅雷と真三郎は、すぐに仲良くなった。光とも同様。彼の能力は夢想系“雷”。電気による攻撃は勿論、雷の速度で動くことができるという画期的な能力だ。特徴的なのは、空を飛べること。軍は迅雷を重宝した。真三郎と光は、光麟の“いずれ行動を共にする、腕利き”なのではないかと疑った。まず、最初着たときの服装が豪壮だったのだ。第十五話　　七星龍　「どうもこの度は、風魔軍団長の同僚、いや後輩としてお世話になります！迅雷印銀といいます！」真三郎は、迅雷について戦場に出たら突出する猪武者というイメージを持った。少なくとも能吏の風貌ではない。　迅雷と二人が仲良くなったのは二人の性格によるものかもしれない。将の真三郎、智の光、武の迅雷、といったところだ。初陣以来、光は戦に逸るようなことはしなくなった。それが迅雷による影響なのか、戦いを知ったからそうなったのかは、彼のみぞ知る。　「なあ、真三郎。七星龍って知ってるか？」迅雷がある時聞いてきた。「知らんよ」「親父から聞いたんだけどさー、イマイチ理解できなくて。」ものしり爺さんが言っていることを無知な真三郎が理解できるわけはない。「おう、相槌をいくつもいくつも打ちながら聞いてたくせに。理解できていないとはとんだ馬鹿者がいたもんだ！」迅雷がいきなり後ろから殴られる。迅雷が驚くのは当然だが、その気迫のせいもあって真三郎まで怯んでしまった。声と拳の主はあろう事か大絶賛手配中の光麟だった。迅雷はまさか光麟がいるとは思っていなかったのだろう。状況を理解できていない様子だ。「な、なんでいるんだよ。」ようやく状況を把握できた迅雷が問いかける。「我は足が速いからな、簡単だ。それよりこれくらい知っているだろうと思って話したことを全く理解できないとは。武芸一辺倒に育ってしまったものよ。」　理解できなかった真三郎が迅雷を笑える立場ではない。詳細を訊くと、長々と話をされた。　ほぼ理解できなかったのはご愛嬌、だが、真三郎に理解できたのは「神懸かりな7つの能力である、ということだった。第十六話　　　闇「出動指令！速やかに全軍出動！」風魔軍団長が朝11時、大音声をあげて寮を走り回った。初めての緊急出動指令なので、真三郎は慌てながらも急いで準備し、同じ部屋に手配された光と共に集合場所に集合した。　出動目的は、「奸臣討伐」。噂では最も頻度の高い項目と聞いている。分類が難しく、戦いを伴うものはだいたいこれに分類されるらしい。だが、今回のは文字通り佞臣、奸臣討伐だった。「此度の敵は、この国を窮地に落としうる強大な敵である。かといって徒党を組んだやっかいな敵ではない。敵は能力者ひとり、我々風魔軍団であれば倒せる敵だ！」前置きを風魔軍団長は叫び、作戦の概要を話した。まずは、反逆の内容。敵、“黒川魄志”は先日、城下の荒町を破壊した。それを反逆と見なし、将軍海龍義満は炎陣少佐を派遣した。その流れで我々が行くのだ。」ここまで言い切って、光は質問した。「城下は、どのように破壊されたので？」　風魔軍団長は、盲点をつかれたかのように、暫く考えていた。暫くのあと、「奴の能力は闇。その能力を使ったのだろうが、詳細はわからん。すまんな。」　闇。それだけで真三郎のみならず全軍が畏怖した。中身はどうあれ、いい印象を与える言葉ではない。第十七話　　　序曲　風魔軍団長の指揮下にいるものたちで討伐に行く、というのは上っ面だ。実際は、その中の能力者たち－意図的に集められた－が行くのだ。それだけ魄志が強く、一般人が行っても死傷者が増えるだけ、ということだ。　真三郎たちは被害にあった荒町に行ってみた。ひどい有様、という言葉もない。なんと街並みどころか、残骸さえも残っていない。「本当に町があったのかどうかもわかんねぇな…」迅雷の率直な意見は、一同の－風魔、真三郎、光、迅雷、炎陣－の本心そのものだったと言っていい。「本当に街はあった。魄志がある限り、これは続くだろう。根城はわかってる。早々に討ち果たす。」　その根城というのは破壊された荒町からそう遠くない場所だった。大きめの屋敷だ。意気揚々と迅雷は駆けていった。が、能力を使わず、走っていったために、死角の位置にあった堀に落ちていった。間抜けそのものだ。もちろん、夢想系だから物理的な痛みは感じないが、迅雷は怒って突撃していった。他の人達は光の氷橋を渡って屋敷までたどり着いた。　屋敷に入って、いや押し入って、まず迅雷が吠えた。「黒川ー！どこだー！でてこーい！」お次に炎陣少佐が能力で火を放つ。「“煉獄”」　それから、二手に分かれて探した。風魔、真三郎、光グループとその他だ。それが命取りになるとは誰もが思わなかったことだ。第十八話　interlude　真三郎と光、風魔軍団長のグループは、屋敷の東側を捜すことになった。しかし、廊下に突っ立っているわけでもなかろう、部屋を開けながら捜していった。もう探す場所は探し尽くし、残すは屋上のみとなった。南西からの風に耐えながら屋上に上った。「いませんね～…」真三郎が半ば投げやりに言った。あるいは、ここにはもういないのかしれない。「確かに…。ここにはいないことも考えられるな。捜索隊が入った時に一挙に殲滅出来たはずだ。奴の能力ならば。」　真三郎は、風魔軍団長が何か隠していることに気づいた。だが、そこで問いたださなかったのは大器の片鱗だったと言っても良いだろう。「連絡を取る。…炎陣少佐、そっちはどうですか」　ー炎陣サイドー　「ここはどこだ？あれ？炎陣さんもいないぞ？ん？ここさっきの場所に似てる…」by迅雷　「あ…迅雷…いない…あ、レシーバーが鳴った…お、風魔。実は迅雷がどっか行っちまって…すまん、すぐ見つける」　真三郎はこの情けない話に呆れた。迅雷の性格ならあり得る話ではあるが。迅雷は任せておき、風魔軍団長と真三郎は魄志の場所を考えていた。　しかし真実は、二人のすぐ後ろにあったのだった。第十九話　　The　Finale　「体層なもんだなぁ、真三郎、蘭次。大勢で何をしようってんだ？」　背後から若者、いや同年代の声が聞こえてきた。振り返ると、やはり同年代の男が立っていた。真三郎にはその男に覚えは無いが、風魔にはあるようだ。「魄志か…。俺たちが来ている理由は分かっているだろうな…」「ああ、勿論だ。だが、だからと言って手加減はしねえぞ」「個人的な恨みをここま引っ張ってくるとは…。」「この世の中全体の恨みだ。少なくとも俺だけがお前を恨んでいる訳ではない。それは確かだ。…言っている意味が分かるか？」　真三郎には良くわからないが、何か二人の間には因縁があるらしい…というか、それ以下も以上も読みとることはできない。そして風魔、「…なるほど、そういうことか。なら尚更、口は閉じさせておかないとな…」　魄志は剣を抜き、風魔に対した。真三郎にも、こいつがなかなかの強さを持ち合わせていることは分かる。　それにしても、と思う。どうやって魄志は街一つ壊したのだろう。剣一本で壊すにはあまりに時間がかかりすぎる。飛ぶ斬撃なるものを使っても、時間はかかるはずだ。もしかしたらその方法に、魄志の強さが眠っているのかもしれない。　魄志が斬りかかってきた。その剣は人の身長くらいもあろうか、大剣だ。風魔はその斬撃を風で止める。どうやら風を一点に集中させて槍を作っているらしい。真三郎も加勢しないわけにはいかない。「森羅万象斬っ！」二刀で斬りつける。が、「！？」弾かれた。何に弾かれてこうなっているのかも分からないまま、倒れる。気は遠くなっていくが、光と迅雷の、大丈夫か、という声は聞こえた。どうやら魄志はその場を去ったようだ。第二十話　　　海黒戦争　真三郎は、それから少しの間昏倒していたらしい。その少しの間に、真三郎を揺るがす、大事変が起きていた。　―中枢、風魔蘭次の死。―　実際、軍の上層部では、風魔を重宝していた。個人の戦闘力、機動力はさながら、知略、統率力も一流だった。風魔は軍団長という高くない地位にありながら、それ以上の影響力を持ち合わせていた。さる名家の出身だという炎陣少佐でさえ、完全な遅れを取ることは無いと言われている。　当然、軍は動揺した。風魔を慕っていた人も多かったし、畏怖、警戒していた人もいるだろう。真三郎も、風魔を尊敬していた。一種憧れでもあった。それが死に、泣きに泣いた。起きてすぐ、光が恐る恐る言ったのだ。尊敬していたのは知っているが、隠すことは当然できないし、早く言わねば危険なここを早く離れられないと考えた。　真三郎は風魔の遺体を見ることはなかったが、光はその現場を見ていた疑う余地はない.もし、真三郎が見ていたら泣いている時間はもっと長かった。　後日風魔の葬式が行われ、同時に魄志の悪名はグンと伸びた。生死問わず、捕縛した場合公開処刑という最も厳しい措置が取られていた。真三郎は数日鬱ぎ込んでいたが、しばらくするともとに戻っていた。　―その矢先、真三郎とセリべに襲いかかる悲劇。それは風魔の死に等しいか、あるいはそれより大きいものであろう。―第二十一話　　　　嘘と真実　　風魔の死から一ヶ月しないうちに、大将海龍義満は自ら黒川魄志追討を誓った。儀式的なもので、実際に捜索するわけでは無いだろうと思っていた真三郎だが、風魔に対する感情は強かったのだろう、あろうことか自ら捜索作業に乗り出したのだ。まったくもって異例の事態だと言っていいだろう。真三郎はその海龍の心に感動した。一種の忠誠心といっていいだろう。　果たして、それから時間がたっても魄志は見つかることはなかった。大将海龍も、いつ見つかるか分からない犯罪者探しにずっと協力できるほど暇ではない。一週間で海龍直々の捜索は打ち切られた。だが、捜索そのものは続いている。真三郎はそれに期待している。風魔を失った悲しみのはけ口が魄志に向かっているのだろう、と光は考えている。事あるごとに悲しみを口にしている。　そして悲しみも一段落ついたところで、いよいよ魄志捜索を手伝いたいと願い出た。その時の応接は炎陣少佐。「私達も魄志捜索を手伝いたいのですが、どうすれば良いのですか」真三郎がそういうと、炎陣少佐は快く許可してくれた。「お前のその気持ちはよく分かる。俺には拒否なんかできやしないだろうな。」　真三郎はその翌日から捜索をはじめた。といっても草むらに隠れているわけでは無かろう、聞き込みや怪しい場所に潜入するのがメジャーだった。　それから少しして、真三郎の耳に驚くべきことが入ってきた。「黒川魄志の公開処刑が明日行われる」という報だった。第二十二話　　　公開処刑　真三郎はその言葉を信じられないあまり、もう一度聞いた。「黒川魄志の公開処刑」。返ってくる答えは変わらなかった。　別に悲しくはない。むしろ喜びの感情が湧き出てきてもおかしくは無いのである。だが、今回ばかりは気になった。少し前に真三郎は、炎陣の許可をとって捜索を始めたのだ。処刑の前準備にかかる時間を含めたら、その時すでに魄志は捕まっていたことは十分考えられる。捕まった事自体には真三郎には不満も何もない。むしろ喜ぶべきことだ。しかし、問題はそこにあるのではない。あえて名を出すならば、炎陣、あるいは海龍だ。真三郎が捜索を志願したとき、すぐにその情報が伝えられてもいいはずなのだ。黒川魄志の処刑が漏れることで何か不都合があるのかもしれないが、まず考えられない。考えられるとしたら、軍がなにかしら、大事なことを秘匿しているということになる。真三郎は、上層部に問いただして、真実を突き止めようと、決意した。下手すれば命を取られるかもしれない。が、そうでもしなければ今後軍人として生きていくことはできなくなるかもしれないと思った。いや、そう確信した。　「光…。どう思うよ、今回の件？」真三郎は光に聞いてみた。どうせなら他の人間の意見を聞いてみようと思った。「どうも…やな感じだな…。だが、別にそれがどうってことでもないだろう。お前にとっても処刑そのものは悪くねぇ話ではあるだろ？死に急ぐことはないぞ」　真三郎はここまで聞いて光に感服した。見事に自身の魂胆を見透かされていた。そういう面でも、やはり親友に値する。　処刑の当日、二人はその処刑の場に向かった。ついに真三郎は、光のおかげというべきか、軍部に問いただすことはしなかった。第二十三話　　　遺言　処刑前に真三郎は魄志に会いたいと申し出た。軍部はそれを、死刑囚と因縁ありなら許すらしく、許可をもらった。魄志は死刑囚としての雰囲気は全くなく、堂々としていた。聞くと、大物死刑囚によくあることだということだ。それはともかく、真三郎は魄志に会いに行った。なんとその場には光麟がいた。もちろん、変装は施している。「どうだ…。奴の死ぬ様を見られて…。光麟は真三郎に問ったが、無視する。「印銀はどうだった…？なかなかなもんだろう…？」光麟が聞いてきた。やはり印銀は光麟の回し者だった。まあ予想はできていたから驚きはしない。光は完全に無視して「黒川魄志…お前、本当に風魔を殺したんだよなぁ？…いや、別にそれは疑わないが…。」真三郎が光麟に話しかけられていると、横から光が口を挟んだ。「お前見ただろう…？この真三郎っての。お前を倒しに行って返り討ちにあったときにいたやつだ…。そこからだな、お前の不幸は…。手を出してはいけないやつに手を出したんだよ…」光が饒舌に話し始める。そういうところは光には敵わないと、真三郎は思う。がしかし、それが魄志に響いた様子はこれっぽっちもない。ただ無言で見返している。真三郎はその目が、無念さを持っているように見えた。（それもそうか…。生きてぇんだなぁ…こんな奴でも…）感傷に浸る真三郎だった。　しばらくのあと、魄志の処刑が行われた。特に変わったこともなく、終わるかと思ったが、最後、クローズアップされていた魄志がこう呟いた。「父の…遺志は…継げなかった。だが…。俺も…。」……銃声。　真三郎にはそれが大きな意味を持つように思えて、しばらく考えていた。光麟はその様子を読み取り、「まあ、深く考えすぎないことだ。死人に口なしだ。たとえあいつが何か知っていたとしても…。大したことでは…あるまい…。」口ぶりに淀みがあった。第二十四話　　　油断大敵　処刑が終わり―終わっていなかったのだが―真三郎はその場を離れた。「風魔軍団長ほどの人をどうやって倒したんだろう…」光は呟きながら帰っていた。「強いんだろ…。あいつの闇の能力の詳細も分からないままだが…。町を丸々破壊して、不肖ながら操術系である俺を軽々倒して…。そういえばなんで俺を倒さなかったんだろう…。」それは風魔が死んでからずっと考えていた問題だった。口封じをするなら近くにおり、殺す相手に恩を受けている真三郎は殺すのは常識だと思うが…。昏倒までさせたのに、なぜ命まで奪わなかったのか。思考はそこまでで遮られた。　ドゴーン!!!　爆発に似た音が鳴り響き、刑場が崩れ始めた。｢な、なんだ⁉何が起こった⁉｣真三郎が狼狽する。光は冷静に「ちょっと見てこよう」という提案を受け、真三郎は光とともに刑場に戻っていった。刑場は壁に一本の切り傷があった。「誰が…？」真三郎はとっさに聞いてしまった。しかし光にも分からない問いではある。真三郎は近くにいた上官…否、炎陣少佐に話を聞いた。炎陣少佐は真三郎が去ってからも刑場にいたらしい。「魄志だ…。銃弾を…能力で回避しやがった。…そういやおめぇはまだ能力知らなかったっけ。七星龍の一つに数えられる［闇］の能力。全てを無に還すという。銃弾をその［闇］で飲み込んだんだろう。…なに、すぐに取り押さえられた。生きちゃいないさ。だが、その死ぬ前に荒らすだけ荒らしたのさ。全く…。困ったやつだよ。」炎陣はそういった。魄志が生きていないということを確認できて、真三郎は少し安堵した。　「だが」と炎陣は断りを入れた。「軍は少し機密行動をするとのことだ。まあ…何も起こらないと思うが…。一応言っておく。」真三郎はもうそれは聞いていなかった。第二十五話　　　捏造　真三郎は、魄志が生きていないということを確認できて、さっさと帰っていった。それだけ心配だったのだが、上官たる炎陣がいうなら間違いということはあるまい、ということを根拠に自分を信じ込ませた。　真三郎が刑場から出て、しばらくすると…。「⁉」急に太陽の光が―ひかりが―消えた。いや、それだけではない。街灯の光さえも消えた。町は闇に包まれた。こう書くと中二病になるが、物理的に闇に包まれたのだ。真三郎も軍のことを完全に信用しているわけではない。軍が死んだと喧伝している魄志をまずは疑った。「生きているのでは、魄志は…。」この疑念を持ったのは真三郎だけではなかった。その闇を目の当たりにした国民もそうだ。勿論、光もその疑念を抱いた一人だが、真三郎とは違う考えも持っていた。「この状況、どう考えても自然現象ではない。そうだな…。自然現象だとしたら真三郎、お前にしかできないよ」と軽口を叩き、「魄志に全ての原因があると決めつけるのは性急すぎる気がする。軍が関わっているにせよ、真三郎、お前はもうちょっと大きな視点を持ち合わせたほうが良いぞ…。大きな人間になりたいのなら尚更だ。」　暗くなって一週間、軍部はさながら「原因究明」していたが、真三郎は平穏な生活をしていた。闇に包まれる、とはいえ真っ暗ではない。ふつうに生活できる程度の光はある。　だが、何もなかったわけではなかった。真三郎のもとに、一人の大物が現れたのだ。その名は「氷島宗戦」。大木光の親という。第二十六話　　　武勇伝	　真三郎には少し分かったが、この氷島宗戦というのはとても強い。今は真三郎のほうが強い…いや、互角だが、もはや宗戦というのは老体。全盛期には完全に負けているだろう。「…！父上…！」光のその声は、とてもではないが喜びの声ではなかった。敵意も混ざっているように聴こえた。「よう、光…。相変わらずだな…。…そっちの強いのが光の友達の…真三郎とか言ったか？どうもうちの光が毎度お世話になってるよ」能力というものは血縁によって継承されるものだ。だから能力者が死んでも同じ能力がなくなることはありえない。血縁的に一番近く、幼いものに能力は継承されるということだ。ただし、すぐに継承とはいかない。一週間近く能力は誰にも継承されない。過去には正龍光宗の死後、生まれてきた赤子に能力が継承された例がある。生きている間にも継承は可能で、氷島宗戦もそうなのだろうか、刀は氷でできている。過去は宗戦も氷の能力者だったのだろう。　「儂は、三英傑の一人と、仲が良かった。」宗戦はとんでもないことを言い始めた。三英傑は魔王サタンを倒した、と伝わるいわば現実のスーパーヒーローである。光麟と話してから覚えて、詳しく調べた。「と、いいますと…。長光光麟という人をみたことは…？」「当然、ある。…というか、何故お前らが知っとるんじゃ」宗戦にツッコまれつつ、宗戦の武勇伝を聞いた。他の二人とともにサタンを倒したこと、残党に攻められ、他の二人の協力を求めずに籠城戦で圧勝したこと、仲間と戦ったこと…。三英傑そのものの強さは見なければ分からないが、籠城戦でのことは宗戦の軍略家としての能力、個人での能力を認めないわけにはいかなかった。聞き流していたが、宗戦が三英傑であるということも。「それで…仲間の内一人が死んだ。非業の死だな。それの遺児が、この前死んだ黒川魄志ということだ。」聞き流そうとしたが、嫌でも耳に入ってきた。（魄志は三英傑の…⁉）「そうだ。三英傑きっての強さを誇っていたからなあ、あいつは…魄志もまた恐ろしかろう…」真三郎は驚愕でしばらく口が動かなかった。第二十七話　五蘊盛苦　真三郎の驚きもそうだが、そばにいた光も迅雷も驚愕していた。「…で、なんでお前は知っているんだ？…いや、なんで知っておられるのですか？」いちはやく動揺から立ち直った真三郎は宗戦に訊いた。軍でさえ言わなかったことを、なぜこの男が知っているのか。もしかしたら軍も知っているのかもしれないがだとしたら機密情報をこの男は知っているということになる。「なんでって…。親友の子供くらい把握していて当たり前だろう。…今の国家では機密情報ではあるだろうがな。」と言われつつ気になったことがある。いや、今回に限ったことではないのだが…。「なぜ、セリべは…。事あるごとに三英傑を隠蔽しようとするのでしょうか…。」真三郎が深刻なことに気づいたように、宗戦に問いかける。だが、その問いに宗戦は、もっと深刻な顔をして―答えるのを躊躇うように―答えた。「多分、軍は―そのためになんらかの力を使ったんだ。記憶を吹き飛ばすような…ね。その証拠に、たった三十年前のことだというのに誰も覚えていない。…確かにあの時、世界に広まったんだよ。情報はね…。だが…、そのあと…ふふ、ちょっとした不覚があってね、しばらくの間の記憶がないんだよ。多分みんな幽閉されてたんだと思う。…今の軍部に。だから、三英傑本人以外はみんな忘れちまった。だから、それを知っていることがばれるとお前らもどうなるかわかりやしない。だから、三英傑をお前らに教えた光麟も…。よほどお前らに感じるところがあったんだろうなって思うよ。…だからここだけの話をするぞ。別に強制ではないがな…。このまま軍部にいても、特に光だが、身元がばれたり、光麟を逃したのがバレたりするのは時間の問題だと思う。然る後、奴らは何か過激な行動に出る。その時は…。然るべき行動を起こしてくれ。」第二十八話　　　謀略のひと　真三郎にはその言葉の意味はわからなかったが、光は―多少煮え切らないところがありそうだが―理解しているようだった。だが、そんな過激なことはまだやるべきではない、と言うと光に「そりゃそうだ、機を臨んで実行するんだよ」と小突かれた。　それから一ヶ月、真三郎と光、迅雷はただ軍の仕事をこなしていった。といっても戦争はしばらくないので、大半は迅雷の苦手な事務だったが。　真三郎はその仕事に集中できなくなっていた。宗戦の言う「大きな力」を使った―と思われる―軍部に不信感を抱いてしまった。そんな真三郎に、光が一回慰め―というには程遠い―の言葉をかけたことがある。「まあまあ。真三郎、あんまり気にすんな。あれがホントにしろなんにしろ、親父得意の謀かもしれん。…あ、言ってなかったかな。三英傑全盛の頃、親父は参謀の役回りだったんだ。敵からも「慧眼の持ち主」と言わしめたこともあるんだ。…今のは親父にしては幼稚なものだけど…。きっと真三郎に…自分の仇である…セリべ軍を倒してほしかったんだろうな。まあ真三郎。今は気にしないことだ。」いつのまにやら光は温和な口調になってきたが、それが光の本当の人柄なのだろう。ともかくも、真三郎の不安というか、わがだまりというものは拭いきれなかった。そうしたまま、真三郎の一つの大事な局面を迎えることとなる。第二十九話　　　奸臣の野望　宗戦の言った、「然るべき時」はすぐに来た。いや、すぐではないが、遅くはなかった。それは真三郎の出陣十回記念の日であった。　その出陣の目的は少し変わっており、「ラルストア追討」だった。すでにラルストアの光麟は隠居、重臣も主君不在によりセリべに走ってきている。もはや風前の灯火、いやさ崩壊しているも同然だった。　それに真三郎は従軍したのだが、もはや大きな戦闘もなく、ただただ破壊のあとを見て痛ましく思うだけだった。武辺一徹の迅雷は、始めこそ「本領発揮だぜ」と喜んでいたものの、戦もないまま歩くだけだったので、「暇だなぁ、こうもセリべが強いと戦いがなくて暇だなぁ」と呟いていた。光はその迅雷に「負け戦ばっかりやるのも骨が折れるぞ」ととりなしている。あまりいつもと変わらなかった、その時までは。　ラルストア見物ということで、セリべはほとんど全軍を率いていった。その総大将であり、軍のトップに立つ男、海龍義満はこの戦に重要な意味を持たせていた。もともとこの男は野心家で、セリべの降将だった。とある大きな帝国を滅ぼされ、そこの一部将として生きてきた海龍にとっては、その滅びは「主家の滅亡」ではなく、「新たな人生の始まりだった。」前の帝国よりかは実力主義傾向で、類稀なる才能をもった海龍は出世の道を駆け上っていった。そして先の軍総帥が死んで―急死して―海龍は見事総帥になりおおせたのである。丁度ラルストアに希代の名将、正龍光宗が名を轟かせ、死んでいった頃だ。　その後も持ち前の武勇、そして権謀術数を尽くし、セリべを全盛に導いた。しかし野心家の海龍は、それが自らのゴールだとは思っていなかった。さらなる栄光を求めていた。第三十話　　　英雄としての一歩　総帥海龍は、主家の力を以て主家を滅ぼそうとしたのだ。幸いにも―作り出した幸運だが―セリべは軍部を冷遇しており、軍人達はどちらかといえば国に仕えているというより、軍に仕えているという認識が強かった。だからその反感を使って軍全体を寝返らせてしまったのだ。やはり権謀術数とは恐ろしい、とその時真三郎は思ったものだ。だがその謀略家の恐ろしい謀を見抜いた、謀神がいた。それこそ三英傑氷島宗戦だった。しかし海龍の強さ所以の人望には敵わずお粗末なものになってしまったが…　海龍の反セリベにはほとんどの軍人達に受け入れられた。受け入れなかったのはたった三人、いずれも能力者だったが、それほど重要な位置にいるものではなく、下級軍人に過ぎなかった。が、海龍の気になることはそれだけではなかった。「あやつらが、三英傑の血縁である…」ということだ。三英傑が「あの時」死んでいなかったのは知っている。だが、それが今でも生きていて、血縁の「あいつら」に耳打ちしていたとしたら…「多少厄介になるな…一人は死んだが残り二人があいつらの味方になると…今少し面倒なことになる…しかも宗戦は優れた智将…早々に始末するに限るな…」　真三郎と二人は、その「離脱者」として脱走していた。「早かったな、親父の〈来たるべき時〉!!」光が喜んでいるような顔でそう叫んでいる。そして戦がなくて（無いに越したことはないが）拗ねっぱなしだった迅雷もむしろ喜んでいた。「でも負け戦だぞ」真三郎は苦笑いしながら宥める。確かに軍を持たないセリベが海龍中心の軍部に抗うことはしないと見ている。そうなったら三人で抗うしか無い。味方が増える可能性も限りなく低い。「貴族どもはあの地位を失うのも嫌だが、死ぬのも嫌だろう。今まで領土拡大に努めていたのは単にもっと豪華な暮らしをしたかっただけだ。野心ではない。多少のお駄賃をくれれば領土など失ってもいいというタマだ。海龍も変に戦を起こして町を破壊したら収入も減るし何より民忠が下がる。海龍は降伏を呼びかけるだろう。」「そして降伏する、と。」光も苦笑する。「なに、俺は軍を率いて戦いたい訳じゃない。戦いたいんだ。例え負け戦でも！」迅雷の無鉄砲さに呆れるばかりだった。</title>
         <author>konnoharuto</author>
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         <pubDate>2022-05-30 02:34:07 UTC</pubDate>
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         <title>第三十話　　　英雄としての一歩　総帥海龍は、主家の力を以て主家を滅ぼそうとしたのだ。幸いにも―作り出した幸運だが―セリべは軍部を冷遇しており、軍人達はどちらかといえば国に仕えているというより、軍に仕えているという認識が強かった。だからその反感を使って軍全体を寝返らせてしまったのだ。やはり権謀術数とは恐ろしい、とその時真三郎は思ったものだ。だがその謀略家の恐ろしい謀を見抜いた、謀神がいた。それこそ三英傑氷島宗戦だった。しかし海龍の強さ所以の人望には敵わずお粗末なものになってしまったが…　海龍の反セリベにはほとんどの軍人達に受け入れられた。受け入れなかったのはたった三人、いずれも能力者だったが、それほど重要な位置にいるものではなく、下級軍人に過ぎなかった。が、海龍の気になることはそれだけではなかった。「あやつらが、三英傑の血縁である…」ということだ。三英傑が「あの時」死んでいなかったのは知っている。だが、それが今でも生きていて、血縁の「あいつら」に耳打ちしていたとしたら…「多少厄介になるな…一人は死んだが残り二人があいつらの味方になると…今少し面倒なことになる…しかも宗戦は優れた智将…早々に始末するに限るな…」　真三郎と二人は、その「離脱者」として脱走していた。「早かったな、親父の〈来たるべき時〉!!」光が喜んでいるような顔でそう叫んでいる。そして戦がなくて（無いに越したことはないが）拗ねっぱなしだった迅雷もむしろ喜んでいた。「でも負け戦だぞ」真三郎は苦笑いしながら宥める。確かに軍を持たないセリベが海龍中心の軍部に抗うことはしないと見ている。そうなったら三人で抗うしか無い。味方が増える可能性も限りなく低い。「貴族どもはあの地位を失うのも嫌だが、死ぬのも嫌だろう。今まで領土拡大に努めていたのは単にもっと豪華な暮らしをしたかっただけだ。野心ではない。多少のお駄賃をくれれば領土など失ってもいいというタマだ。海龍も変に戦を起こして町を破壊したら収入も減るし何より民忠が下がる。海龍は降伏を呼びかけるだろう。」「そして降伏する、と。」光も苦笑する。「なに、俺は軍を率いて戦いたい訳じゃない。戦いたいんだ。例え負け戦でも！」迅雷の無鉄砲さに呆れるばかりだった。第三十一話　　　第一次真海戦争　いくら強いといっても限度がある。真三郎も、七星龍の能力者とはいえ数万の精鋭を相手にして戦うことは実力的にも体力的にも不可能に近い。真三郎の能力でも範囲攻撃は出来ることは出来るがまだ真三郎には習得できていない。唯一出来るのが迅雷か。ともかくも、真三郎たちは宗戦の策謀に乗せられて、いや後先考えずに乗って反乱を起こしたので、特に勝算など無かった。だから、このまま行くと負ける。絶対、負ける。いかに宗戦が奇策を与えてくれても勝つのは無理だろう。このままでは。　そう考えたのか、光は真三郎に策を授けてくれた。「俺らはラルストアと組む。その上で海龍が政権を剥奪し、民の不満が出てきたところで、ラルストア兵と共に打って出る。政権を本格的に剥奪するまではラルストアには目を向けることは出来ない。」という策だ。真三郎もそれが良いなとは思うが、「だがそうすると大義名分が薄くなってしまう。〈政権奪還〉より〈政権保守〉の方が強いと思う…。今回の戦は民衆の力にかかっている。それを動かすにはやはり大義は強いほうが良い」　光は一度は納得した様子だが、またも疑問が出てきたようだ。「だがそれでも民衆が海龍を圧倒する数が集まる保証はないし、しかも今の皇帝への恩顧は少ないと来る。ラルストアで兵を借りて、政権を奪われる前に突出するのが良策ではないか？」真三郎は、光の筋書きに感嘆した。それを必ずしも全部受け入れるつもりはないが、大方の筋書きは決定した。　真三郎は海龍の動きを諜報により探り、光はラルストアへの裏工作と民衆への工作を施した。迅雷は肝心のラルストアへの交渉を受け持った。これを以て第一次真海戦争の始まりと見るのが妥当だろう。第三十ニ話　　　決起　真三郎たちには、軍への憎悪とか、大きな不満があるわけでは無かった。しかし一度振り上げた手を何もせずに下ろすことなど出来やしなかった。特に迅雷が。「なんで負けそうになったらプライドを軽々と捨て、よりによって降伏しなきゃいけねぇんだよ！俺が戦いたいっていうのもあるが…、いや、ともかくもプライドはねぇんか！」迅雷の儒教的な説教を聞き、真三郎は苦笑した。いつもそんな恥とか気にするタイプではないのかなと思っていたら、かなりのプライドを持ち合わせているではないか。やはり素朴なだけにそういう純粋なところがあるらしい。迅雷の人柄の長所であるだろう。　が、しかしである。やはり真三郎の気にするところではある。恥をかくのは結構だが、そこから無事で帰れるか、ということである。もはや今までの地位は捨てたが、それにしてもかなり厳しい地位になるだろう。たとえすんなり帰参出来たとしても、裏切りを警戒された上、謀殺されるかもしれない。そういう闇は嫌というほど見てきた真三郎だ。自分たちのためにも、今後取るべき行動は…「決めたぞ迅雷。負けは承知、俺たちが軍を正すという名分で死兵として上層部に戦いを挑む。雑兵に構わず、突撃する。とは言っても皆殺しは俺たちのためにもならない。戦いを長引かせるだけになる。だから迅雷のラルストアに兵を借り、それで雑兵を足止めする。雑兵の指揮に誰か行くか？」迅雷は自ら戦うタイプ（戦いたいタイプ）なので、そんな指揮に自信があるわけでもなし、希望するはずもない。「俺が行く。俺一人の戦力ではお前達に敵うわけがない。兵を指揮する。」光が名乗り出た。真三郎もそれが良いと思っていたから、「感謝する。」とだけ言って解散した。決起日は明後日。第三十三話　　　　襲撃　ともかくも、真三郎達は準備に入った。迅雷は父光麟（もはや三人の中では公になっている）の人脈を使ってのラルストア工作も成功しつつあり、光の民衆蜂起の扇動もうまくいっているらしい。軍も真三郎の一人や二人、裏切っても困らないという姿勢を貫いているので、真三郎たちにとっては「戦わない」選択肢もあるにはあるのだが、もはや選ぶことは出来ない。しかし軍が攻めてこないというのは朗報だ。好きなときに仕掛けられる。　そもそもラルストアは、名将正龍光宗を失い、その子虎勝を引き抜かれた後、王族の血をわずかに引く光麟を仮の軍配者に引き立てたものの、大軍風魔の大軍には敵わず、捕虜とされて以来、優秀な指揮官がおらず、弱体の一途を辿っていたのだ。海龍が政権を奪おうとしたのは攻め入る好機で、兵も準備をしていたものの、海龍も強き将、そうそう破れるとは思えず、好機をものに出来ず、困っていたのだ。そこに光麟の血を引くものが工作をかけたことで、意見は「真三郎という兵法者に軍を貸し与えよう」という方向に傾いた。異論はない。　民衆工作の方でも、「名ばかりとはいえ、この国を統治してきたのは皇帝だ。少なくとも旧主に恩を仇で返すという風潮が生まれてきた。海龍は「何者かの策略だな…ラルストアの誰かだが…そんな器量持ちはいないはずだが…」と思い、ラルストア方面に軍勢を派遣した。だがそれは裏目に出てしまい、真三郎の襲撃に備えるだけの武力を使い果たしてしまったのだ。しかしラルストアの援軍の半分が阻まれてしまったという点では成功した。まあ、結果的には失敗なのだが。　光は半分の援軍で屯所の強襲を計画、実行した。その間に二人は手薄になった上官の館に奇襲を仕掛ける寸法だ。光にはどうも心配だったが、二人を信じることにした。いまさらあの二人を裏切ることなど出来ない。第三十四話　　　緒戦　「敵襲！敵襲だ！武器を取れ！」けたたましい叫び声が―屯所から―響いた。真三郎と迅雷の夜襲の際だ。「よし、真三郎。上官の一人や二人、手傷を負わせて帰るぞ！」迅雷の気合に背中を押されて真三郎は中に入っていった。すでに腰の座っていない連中は逃散しており、悠々と進んでいった。出口は迅雷の電気でトラップを仕掛けており、出ようものならかなりの重傷を負うようになっている。だがそれは時間差で発症するので前に逃走した人が罠にかかっているのに気づくことはない。だが、逃げない腰の座った兵士もいることだ。真三郎はまるで屋敷のような屯所を、兵士たちと戦いながら進んでいった。真三郎達は「能力者の上官は体面を気にして逃げることはしないだろう」と思っていた。これが甘かった。　真三郎は兵を一人捕まえて海龍の場所を聞き出した。なんと炎陣や海龍などの一定以上の階級の者たちは兵を散発させ、逃げていったとのことらしい。電気のトラップのない、裏道を通っていった。何故気づいたのか、それに気づくのは少し後のことだ。真三郎と迅雷は歯噛みしたが、少し能力者は残っていた。真三郎と迅雷はそれらを倒して、これからの本戦で少しでも有利になろうという腹だったから、海龍を倒せなくても関係ない。これは絶対方針だった。　「おう、裏切り者…いや、お前たちから見たら俺たちが「裏切り者の謀反人」という受け取り方になるのか…。まあいい、みんな自分の正義を持っているんだ。俺はお前たちを恨みはしない。」前から声がかかった。今まで戦ってきたのとはひと味違う感じだった。「《岩盤甲》！」その男が―いや、正確にはその男の手だが―巨大な岩でプレスしてきた。迅雷は夢想系、実体が無いので効かなかったが、真三郎に直撃したらまず無事では済まない。真三郎は岩の大きさゆえに避けられないので、斬った。世に謳われる「飛ぶ斬撃」はまだ使えないが、岩くらいなら、斬れる。相手は少し驚いたような顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。「こんな強いのが無位無官とは…反乱を起こすも当然か…俺の名は…葛西堯任という。」葛西との戦いが、初めての本格的な激戦となるのだった。第三十五話　　　高い壁　葛西は、軍の上官の一角を占めるのに相応しい実力の持ち主で、なおかつ「岩石」の能力者だった。変術系で、体を岩石に変化させることだ出来るという能力だったが、それもただの岩石ではない。その葛西の「強さ」つまり「魔相」の強さが硬さの強化に繋がっている。「魔相」というのは人間が持つ強さそのものというもので、心の強さ、勿論肉体的な強さというものを総合して考えられる。いくら馬鹿強い能力を持っていても「魔相」が強ければ太刀打ちできうる、ということだ。魔相は強さに応じた結界を張る事ができ、これを応用すれば夢想系の能力者でも触ることが出来る。だが反面、変術系の能力者は、その能力を使っている間は結界を張ることが出来ない。ここが、一般的に変術系より操術系の方が強いと言われる所以である。葛西は、その魔相を応用して岩石を強化した。そのため普通の石なら難なく斬れる真三郎でも、容易には斬ることが出来ず、苦戦しているのだ。　「…ぐっ…硬いな…。俺の魔相もまだまだだな…」真三郎は呻いたが、葛西は一発も攻撃をくれていない。「どうした反逆者。師団長たる俺にさえ苦戦するとは…期待外れだ…。」葛西の挑発に真三郎は乗らなかったが、しかし困ってはいた。今の所迅雷は別の敵に釘付けにされており、それも弱くはないということで、真三郎は無援の状態だった。ならば、「一人で戦うほかあるまい。」　「《風林斬》！」短剣一本に強風をまとわせたたっ斬る技だ。残念ながら迅雷のように能力に頼りっきりの戦い方は出来ないが、戦闘能力の強化にはこれ以上ないという程の能力だ。「ぬっ！」腕を石化させ、葛西はガードし、さらに飛び退いて「《烈岩拳》！」と拳を繰り出してきた。恐ろしいスピードで、避けることもままならない。が、真三郎には能力がある。強風で空中移動する。拳が真三郎の代わりに当たった壁は、粉々に砕け散って、ぽっかり穴が空いてしまっていた。これほどの戦闘力を見せつけられ、真三郎は「高い壁」を強く感じたのだった。第三十六話　　　狂人の策　真三郎が葛西に切歯扼腕している頃、迅雷は足止めを食らっていた。いや、足止めというレベルではない。ガチの戦いだった。　「クッ…！しぶといな…」迅雷は攻撃をくらいながらも辛うじて相手に攻撃を当てられていた。相手は通称・鉄島鋼次郎。変術系鋼鉄の能力者だ。本名は鉄斎、名字は無いというのが噂だった。何しろ鉄だから電気が効かないのである。受け流されてしまう。だから結界を張って殴りつけるのだが、それで体が実体化されてしまうので結局鉄で殴られる。それではダメージレースでは圧倒的に引けをとっている。かといって結界を使わなければ膠着状態になるから、戦闘狂の、迅雷にとってそれは許しがたいことなのだ。　「《鉄拳流星》！！」迅雷が実体化しているすきを見て殴りかかってきた。まさに《流星》の如く、大量の拳が降り掛かってきている。なんとかかわしたが、その時には既に鉄斎は後ろに引いていた。「鉄の体を持ちながら…」と迅雷は思わず感服した。重いはずの体を軽々と常人以上の動きをしている。「このっ…！《雷鳴拳》！」この際、迅雷の魔相による効果、電圧強化が無効化されている。迅雷は鉄斎が人間に戻ったと見て、打ち込んだ。案の定、鉄に素早く戻って受け流した。「迅雷か…苦しいな、それは俺も同じだ…」鉄斎も戦闘狂の一人らしく、なかなか決着のつかないこの戦闘に飽き飽きしているようだ。さて、この場面を打開するべく、戦闘狂人であり、三人の中で一番頭が悪い迅雷が考え、打ち出した策とは…第三十七話　　　雪剣山　真三郎は依然、葛西を相手に戦っていた。不幸なことで、迅雷と戦っている相手が交換できていればもっと早く決着がついたであろう。迅雷が手っ取り早く葛西を倒して真三郎に合流していたかもしれない。　「どうした？真三郎。能力らしい能力を使っていないぞ？森羅万象の本当の神々でさえお前に目をかけないらしいな…ほら、月が隠れている…」葛西が挑発している。「なに…なら今すぐにでも使ってやろう…」真三郎もいかにも森羅万象の能力者という能力を使うことも出来る。「《氷河斬り》…！」短剣に冷気をまとわせ大きな刃にして斬る。といっても斬るのは葛西ではない。天井に向かって斬った。「屋外戦か…何をしてくるのかな…？」葛西は不敵に笑っている。が、もうすぐその笑みも消えるだろう。「《五月雨雪剣山》…！」「…⁉」空から五月雨のごとく、雹―もはや氷柱―が降り注いできた。しかもどれも真三郎の魔相によって鋭さも増しており、更に量の尋常ではない。雹の硬度もまた然り。「《防岩窟》」葛西は岩で岩窟を作り出し、身を護る腹だ。真三郎はその岩窟を破壊しに行った。「《森羅万象斬》!!」見事岩は斬れ、葛西の体には雹が刺さ…らなかった。「お前は何もしていないだろう、それを信じてお前を助ける。が、少し情報を頂きたい。」真三郎はセリベ乗っ取りに関する情報をあまり持っていない。だから葛西から情報を得ようとしたのだ。「…フン、舐めてやがる。…が、吐こう。後々我々の為にもなる。…よく聞け、総帥海龍はラルストアを今度攻める予定だ。お前たちに加担したということを大義名分とするらしい。」あまり期待していた情報は手に入らなかった。真三郎は諦めて、葛西を縛り付けて迅雷の加勢に向かった。既にこの屋敷には上官はいない。第三十八話　　　雷炎拳　迅雷は、自分の得意とする電撃による攻撃が効かない鉄斎に、なかなか苦戦していた。どちらかが結界を使わないと膠着状態になるので、そうなったら不利なのはむしろ迅雷の方だった。真三郎がいつ来るのかわからないからだ。そうした焦りに似た感情を、鉄斎は察知していた。だから、冷静である分、優位に立っていた。それも迅雷は理解しているつもりだが、有効な策が見つからない。いや、一つあるのだが、実際どれだけ効果があるのかが今ひとつ分かっていなかった。「《重鉄炎》！」鉄斎はなぜだか炎をまとうことが出来る。いま、燃えた鉄が実体化した迅雷に降り注いでいる。「ぐっ…！避けられるが…攻撃できないのは痛いな…」そこで、もうがむしゃらに攻め立てることにした。「うらぁ！うらぁ！…硬いな…」いくら迅雷のほうが魔相が強かったとしても、鉄斎の方は元から鉄なので、魔相が同等だとしたら素手で鉄を殴っているということになる。…だが、辛うじて迅雷の攻撃は鉄斎に入っているようだった。「…小癪な…！…小僧、くらいやがれ…」と、思いもよらぬ事態が起きた。鉄斎の腕が伸びた…。「は⁉」迅雷は虚を突かれて顔面に直接食らった。常人でもこれで伸びるはずだ。こんな奥の手を残していたとは。だが決して楽そうではない。「…よし…、今が良さそうだ…。」　迅雷は距離を詰めた。結界を使っていないので、雷の速さで動ける。これは大きなアドバンテージだった。そして迅雷は―大きな電気を生み出していた。鉄斎は「効くものか！やけになった時点で負けだぞ！」と叫んでいる。だが、電撃と打撃だけが迅雷の攻撃手段ではない。「我、雷光の如く…！《雷炎拳》!!」電熱で炎を創り、鉄をも溶かす…それが迅雷の第三の戦い方だった。　真三郎はその少しあとにやってきた。「おい！お前！煙で死にそうだわ！俺も疲れてるのに…雨を降らすのも疲れるんだぞコラ！」真三郎は怒りながら迅雷に再開した。「すまんすまん…で、どうするか。もうこの分だと上官はいないぞ。」「そうだな…光と合流して次は直接攻め込むか。あそこから逃げることはあるまい…。なんたって士気が下がるもんな…だから決戦はその時だ。」第三十九話　　　来訪者　前線要員の二人は目的を果たして、破壊し尽くした屯所で光と合流した。そして作戦会議をしていた。「この基地を、南口に全力を投下する。しかし雑兵は他の三方向から投下し、惑わす。我々は少ない兵を率いていく。」という作戦を立て、休憩に入ろうとしていた。他愛のない話をしているところ、来訪者が来た。といっても、元々敵地だった場所である。滅多な油断は出来ない。その来訪者は、警戒すべき人ではなかった。光が出ていって、「はあ、これはこれは。どうもこの度は」などと会話をして、入ってきた。その客は―見るからに強者で―ラルストアのナンバー２に数えられる、「大蛇」と畏怖されている男ではないか。「どうもご無沙汰しております」真三郎は思わず頭を下げた。それだけの器量人であること、威圧というかなんというかの《圧》を感じる。「火影石 光村だ。ちと用があって来た」という。用も何も、こんな危ない場所にまで来てもらって断る義理などない。「この一戦、我がラルストアの戦だと思っている。」そこで一呼吸置いたので、真三郎は「いや、ありがたいと思っております。そちらの助力がなければ今回の襲撃だってどうなったか」そこまで言うと、光村は「そのことだが…当方、少し思うところがあってな。手を退きたいと思っている。」と告げた。一大事である。「それは…」真三郎は絶句した。批判出来るものではない。「申し訳ない。が、俺の要件はこれだけではない。ここにいる、一人の助っ人を紹介しに来た。」何も紹介などいらぬのに、と迅雷は言った。だが、これは普通の助っ人ではあるまい。「知っているとは思うが…セリベの少佐、炎陣虎勝だ」これにも真三郎は絶句した。他二人も同様である。第四十話　　　受け継がれし遺志　真三郎はまず、少し心の中を整理した。何も炎陣憎しで戦っている訳ではないが、如何せん敵。戦う覚悟も整えた。かといって、仲間になるのが嫌な訳ではない。「どうする？」冷静な光が言い出した。こいつだって戦力が欲しくてたまらないだろうにと苦笑いしながら、「迅雷も賛成だろう…。いい話ではあると思う。お前が欲しがっていた情報も、戦力も一気に入る。」真三郎が言い切ると、光にも迅雷にも異存は無く、「分かった。なら、会おう。」と言った。　「久しい…くはないか。よくもこんなことをしてくれたなぁ、真三郎。」炎陣が開始早早小言を言い始めた。迅雷がいち早く反応して「敵を迎い入れてるんだ、機嫌を損ねるのは愚策だと思うが？」とほざいた。「話はそういうことでは無いだろう…。さっさと話せ。内容次第では快く受けよう。」光が仕切った。「うむ。…単刀直入に言う。俺もセリベに対し反旗を翻す。そのためにお前らと共に反旗を翻したい。その、了解をもらう。」炎陣らしい、単刀直入な切り出し方だった。こちらの答えは既に決まっている。「分かった。受けよう。だが、途中で寝返ったお前は、そういう扱いをするぞ、いいな？」人情をここで挟まない光がいう。炎陣は苦笑して、「そういう心が傷つくような言い方はよしてくれ。寝返ったからにはきちんと働く…。この際においても冷静なお前なら分かるだろう、今ここで寝返りが確定した時点で帰参がすんなり叶う訳はあるまい。地位も名誉も失う。」光はあくまで淡々と、「’軍も許容していたら’のことも考えなければならないが…まあ、いいだろう。」ここまで光が言うのを待って、真三郎は「あーっ、炎陣少佐。なんで寝返り…いや、こちらの陣営についたのですか？」と訊いた。炎陣ほどの忠臣も少ないと見ていたが、まさかこちらに走るとは。「…これには深い訳がな。父はラルストアに仕えていた唯一無二の名将だった。その死後、俺はラルストアから…悔しいが、離脱せざるをえなくなった。」離脱とは、寝返りということだろう。まさかこの炎陣にそんなことがあったなんて。「理由？知りたいか。そう、あれは―」炎陣が語り始め、真三郎たちが聞き始めたところで―「うおい！探したぞー！」聞いたことのある老人の声が聴こえてきた。これは…光麟だ。「ふう。こんな一大事があるというのに。しかしこんなことをするとは。生き残る算段はあるんだろうな！」と、短い説教が始まった。真三郎はラルストア国王だという光麟が、炎陣をどう見るか見たかったが、残念ながら無反応。気づかないふりか、はたまた知らないのか。真三郎は考え込んだ。第四十一話　　　無心こそ強さなり「さて、と…」真三郎の思慮を打ち切ったのは光の声だった。ラルストアの兵が減って味方が減ったものの、炎陣はそれに代えがたい力を持っている猛者。つまりは味方が増え、敵が減ったのと同義なので、新しく作戦を考え直した方がいいと考えたのだ。「そうだな。俺は今日、機密情報も持ってきた。これも用立ててくれ…。」炎陣は紙を取り出した。　炎陣による情報提供によって得た情報も使って光はより正確な作戦を立てた。光麟も反対なしの作戦で、成功間違いなしと、場にいた主要メンバーは見ていた。　「光麟…炎陣と会ったことは？」真三郎はその会議のあとに光麟に直接訊いた。そんなこと、証拠もなしにいくら考えても答えは出るわけはない。そういう時は訊くのが最効率だったりする。対する光麟の答えははっきりと明快なものではなかった。その単刀直入な質問に、光麟はらしくなく、「…会ったことはあるにはあるが…。そうだな、お前はあいつがラルストア麾下だったのは知っているんだな。別に同じラルストアで地位を得ていた、というだけで何もお前が想像するような刺々しい感情は持ってない。安心はしてほしい。」と少し口籠りながら話した。ラルストアを炎陣が裏切ったということは、その王を裏切ったということだ。だから、光麟が炎陣に対して、裏切りに対する恨みがあるのではないかと余計なことを考えたが、的外れだったらしい。考えてみれば光麟こそもはや王をやめている。ラルストアに対する強い郷愁があるとは考えられない。人のことを言えない立場にいるのだ。そのようなことを考える訳はない。素直に引き下がった。まずは余計なことは考えないこと。勝つためには必要なことでもある。第四十ニ話　　　知謀戦　真三郎達はそれっきり余計なことを考えずに解散した。この時深く考えなくとも、少し頭をひねれば良かったのに、と真三郎達は後悔することになるのだが…だがこれはまた後の話。今とは関係ない。　と、そんな時、炎陣のところに急遽連絡が入った。「海龍が兵を集めている。今度はこちらを襲撃しようとする肚だ…。」炎陣が淡々と説明する。海龍にはこの作戦会議の間、炎陣が寝返ったのにも関わらず、真三郎たちが動かなかったことに疑念を抱き、これを膠着状態と見たらしい。こういう場合は大軍を擁する方ならば早く仕掛けても問題ない、と誰かから教わったのだろうか。ともかく、迅雷は動揺した。「こんな時に仕掛けられたら逃げることもままならないじゃないか…しかも全力で来たら全部死ぬじゃないか…」と戦慄している。しかし光は冷静に「これは好機ではないか？古来こんな時には動かなかったほうが勝つ、と決まっている。手薄になった海龍の周りをいち早く襲撃し、一気に倒す。どうよ？」と策を披露する。炎陣はこれに賛成し、「やはりそれがいいだろう。海龍は油断癖がある。かなり上手く行くんではないか？」とすでに興奮している。だが一人、真三郎は炎陣とは別のことを考えていた。（…果たして、海龍がそんなあけすけなことをするだろうか？自分の周りの守りがおろそかになることは確か。そんな簡単に嵌るものなのか？いくら海龍が油断癖があるとは言え、かなりの器量人かつ豪傑。そんなことに気づく智将もいるとは思うが…。）と、そこまで考えたが、今はそれを上回る策は見つからない。光のこの策に乗ることにした。海龍がこちらを奇襲するのは明後日。明日には奇襲全軍がこの近くに布陣するらしい。―とはなっていたが、実はこれは嘘で、明日には布陣完了共に奇襲開始という作戦が出てきた。前者には布陣から一日後に奇襲とは解せなかったので頭をひねっていた所だったが、後者はなかなか信用できる。しかもこれは光が潜り込ませておいた人からの情報だから全面的に信用出来ると考えても問題はない。ともかく明日、動きがある。真三郎は思わず戦慄した。第四十三話　　　故啄木鳥　真三郎と光は、来るべき敵襲に備えて屋敷を固めていた。しかし待てど待てどまだ来ない。依然例の場所に集結しているところだった。（どうした…こちらの策に気づいたか…）と危ぶんだが、その必要は無かった。不審になって光は探りを入れた。するとすでに軍はいなかったという。解散したか、それとも…と、考えていた。真三郎はますます分からなくなって、光に相談した。こればかりは分からない。炎陣も知らないというならば、作戦を根本から変える必要があると感じた。が、「いや、もう一つ策がある」と、炎陣と話していた真三郎に言った者がいた。どこから現れたのか、宗戦である。「ラルストアの部隊にはもう未練はなかろう。ゆえにこれを敵の基地に散発する。」真三郎には宗戦の言っていることが分からない。確かに一大決戦しか勝ち筋はないから、戦力はここにいる能力者だけで十分だが、かと言ってラルストアの部隊だけを基地に、しかも散発するというのは合点がいかない。そもそも兵だけ死地に置くというのはラルストアの心証を下げる要因になり得る。これを言うと、宗戦はニヤリと笑い、「どうだ、光」と訊いた。光も少し考えていたが、答えは出した。「なるほどね。親父はそう見ているのか。すると俺たちは…別働隊を叩くべきか…」宗戦は満足げにうなずき、「ラルストア衆は俺と光麟が率いていく。」と言った。　あまり納得のいかないまま、宗戦はラルストア衆に顔合わせに行った。光麟も同様だ。光麟も訝しげな顔をしていたが、宗戦を信じているらしく、さっさと立ち去っていった。光に策を問いただしたが、「お前は知らないほうがいい」とだけ言って次の議題に入った。だがまあ、いい。どうせ妙策であることに変わりはないのだ。全てを他の人に委任するというのもたまにはいい、と思った。それから少しして、さすが慣れているだけあって、もう三英傑組は出陣していった。光が自分に策を教えてくれない理由を勘ぐる真三郎だった。第四十四話　　　策謀無双　理由は教えてくれた。「いついかなる時でも秘策を他言してはならぬ」という。首謀者は俺なんだが、と苦笑しながらも、頼もしく思う真三郎だった。それだけ自信があるということだろう。それは弱さにもなり得るが、決断力を生むという意味で強さにもなる。　セリベ別働隊が動くはずだった当日中に、真三郎の一行は行動を始めた。まず斥候だ。下手な一人二人だと、捕らえられ、下手すれば情報が漏れかねない。ということで光が指示したことだ。その道中、変事があった。森林の近くを歩いていたところ、「タン!!」という銃声が轟いた。幸い主力メンバーには当たらなかったものの、そのあと幾つもの銃声が轟いた。「逃げろ！慌てず、まとまって逃げるんだ！」と真三郎は大声を出して差配する。この場にいるのはラルストア衆から選び抜いた数十人だけだ。だがこういう場合には都合がいい。固まって逃げおおせる事ができた。だが光は不可解なことを言い出した。この後すぐに別働隊を叩くというのである。　―無事敵からの追跡を逃れたところで光は考え―つまり先程まで言わないと言っていた秘策―を披露した。「この際話してもいいだろう。というか話さなければまとまらないことでもある。俺の見立てでは、セリベはこちらに本陣強襲をけしかけて、それをやんわり受け止め、別働隊で背をつく、という策だと考えている。やんわり受け止めようとしたの策のうち一つが、さっきの伏兵だということだ。おちおち屯所に帰ったらその道中、あるいは屯所で奇襲されて殲滅させられる。なかなか見事な策だ。そもそもが俺たちが本陣強襲を思い立たなければ成り立たない策だから、こちらのことを見くびっていないということになる。もしくは、思い立つのが当然というほどの策謀家だったのか…だ。…だが、俺からしたら武勇一点という海龍にこんな策をとてもではないが考えられるとは思えないが…。」海龍を卑下するようなこの言葉を聞いて、「甘く見ないことだ、光」とだけ言っておいた。光もこの言葉の意味を察し、強くうなずいた。「では、準備してさっさと行くぞ！」炎陣は勇み立って立ち上がった。「ああ！」真三郎も勇んで立ち上がった。第四十五話　　　後世で語り継がれよ　真三郎は別働隊を奇襲した。いまさら本陣を攻撃したところで準備万端だろうし、何より別働隊の奇襲が怖い。ということで、どうせすぐには海龍の首を捕ることは出来ないので、セリベの軍部に被害を与えるべく、光の作戦通り別働隊を強襲するのだが…　どこに本陣があるのかが分からない。これがこの作戦を実行する上で一番最初に直面することになった、最大かつ唯一の支障だった。結果として、機動性が群を抜いており、なまなかな攻撃では沈むことのない迅雷にこの役を担ってもらうことにした。当然、血気に逸る迅雷には是非もない。飛んでいった。　数分すると迅雷は戻ってきた。一同は、雷の速さを持つ迅雷なら数十秒で戻ってきそうだと思っていたが、案に相違して遅かった。とはいえ斥候としては破格の速さではあるのだが。迅雷の情報によると、別働隊の本陣はなく、幾つかの部隊に別れて潜伏しているという。こういう場合、奇襲を一部隊にかけたところで被害は少ないし、大きな被害を与えようとすると消耗戦になりかねない。ということで、これまた別れて奇襲をかけることにした。劣勢の場合、兵を小出しにするのは悪手ではあるが、真三郎の場合は被害を顧みずに突撃していくのみなので、関係はない。しかし、光はこの反乱に疑問が生まれてきた。意義は十分に分かっている。が、真三郎が命を賭してまでやり遂げるべきことに値するだろうか。それを察してはいないだろうが、いや、察したのだろう、真三郎がしんみりと、かつ強い気迫を込めて話し始めた。「この戦い…別に無くていい戦いではある。だからここまで大合戦には持ち込まなかった。が、こうも長期化すると実害なくとも迷惑なんだろうな。だから、ここで終わりにする。万が一勝てなかったとしても。我が名と、そして魂と志が。残っていれば、俺はこの世に未練はない。」と言った。そしてすぐに「勿論、勝つに越したことはないし、負けても死ぬと決まっているわけでもないがな。…俺の死生観を語っているだけだ」と訂正した。諦めていると捉えられるのが嫌だったのだろう。光も少し笑いながら覚悟を決めた。迅雷もこれを聞いて、顔が変わった。「迅雷、本当にお前は子供だなあ」真三郎が笑った。確かに、これくらいで感動するのは経験が―真三郎達が濃すぎるのかもしれないが―少ないからだろう。迅雷はおどけて、「はは、俺はずっと子供のままだぜ」と言った。いよよいよ、真三郎の言葉通り、この戦争は終わる。第四十七話　　　清廉潔白なる智将―迅雷サイド―　「気をピンピン尖らせているな…おや、切羽詰まっている顔をしている人がいる…もしや、奇襲の連絡か⁉それなら行動に移さなければなあ…」迅雷は呟きながら一気に強襲をかけた。「《雷槍》!!」雷の槍が敵の陣地を襲う―「敵襲ー!敵襲ー！敵は空にいる！飛び道具を持つ兵は放てえ！」指揮官の絶叫をよそに、兵たちは突如として降り掛かった雷に逃げ惑っていた。大軍と言えども一度混乱に陥ると、実際何が起こっているのか分からない兵たちまでもが逃げ惑うことになる。迅雷はそこに二の矢を打ち込んだ。「雷鳴拳！」兵たちが混乱を極める中、迅雷を射抜く視線があった。「翠苑樹水」変術系流動種、水の能力者である。階級は旧セリべの中では少将ながら、《智将》というかなりの肩書を持つ実力者だ。優れた人材の中でそう言われるのは誉れだというものだろう。「翠苑か…面白い、倒してくれよう」打ちそこねた雷鳴拳を翠苑に打ち込み、戦いは始まった。迅雷としては不本意だが、適当に派手にやり合って足止めするのが目的であるから、あくまでその任務を遂行するつもりだった。―光サイド―　光は迅雷が攻撃を仕掛け、混乱している部隊に止めを刺す係だった。翠苑との戦いに参加するのも良いが、とにかく主力の真三郎を援護することが最大の肝であることは光自身が最もよく分かっている。だから大軍が潰走するであろう道にある仕掛けを仕掛けておいた。氷のトラップである。滑りやすくしておき、全軍の移動を困難にし、更に混乱を強くする狙いがあった。それだけではない。その混乱を極めた兵卒を、一気に光が薙ぎ払うという戦法だ。かくして、逃げてきた兵たちが早速トラップに引っかかった。「うわあ！なんだ⁉」混乱と恐怖が広がる中、光はその刀を振り下ろした。光の刀は氷でできている。使い捨てということだ。「《疾風吹雪》！」冷風と氷の刃を無数に飛ばし、横槍を入れる。兵たちはもう同士討ちさえ始め、軍勢の体を成していなかった。光は「もう十分」と考えて迅雷の援護に回ろうとした。が、そこに立ちはだかったのはたった一人、｢大将」の肩書を持つ、「天野那岐」という、操術系、天の能力者だ。屈指の実力者で、その能力は、七星龍の一つにも数えられている。第四十八話　　　空間の掌握者　真三郎は小部隊を次々に撫で斬りにしていった。戦う前から逃げていった者もあれば、勇敢にも立ち向かっていった者もいた。しかし真三郎は強い。全て返り討ちにしていった。　が、ようやく骨のある者が現れた。名を「無須狩」と言った。本名ではないことは分かるが、真三郎はその無須狩という男の強さに驚いた。今まで戦ってきたいかなる者たちをも凌駕する強さを持っていた。…というのは、見てくれだけでも分かった。「木下真三郎か…惜しいかな、まだ今ひとつ弱い…《高み》というものを見せてくれよう…」そう言って一気に間合いを詰めてきた。いや、それどころの話ではないかもしれない。詰めてくる過程の一つも見えなかった。真三郎は驚く間もなく殴られ、吹き飛んだ。「なっ…どうやって…！」無須狩は鼻で笑いながら語った。「俺はなあ…操術の能力者だ…まあそんな事はわかってるだろうがな…七星龍、空間の能力者だ。空間そのものを支配する。…今瞬間移動したのも能力を使ったからだ…お前には手も足も出ないさ…」真三郎は立ち上がってすぐに斬りかかった。が、気付くと無須狩は既に後ろに移動してしまっている。「まあ、まともに当たって勝てるわけはないよなあ…ましてやお前なんぞに…。」「《夜叉疾風》…」これが真三郎の出せる最高のスピードだ。これで当てることの出来なければ勝ち目は限りなく薄い…が、当たった。これを以て勝ち目とするのは苦しいだろう。なぜなら無須狩は真三郎の斬撃を結界で防ぎきったからだ。「ふっ…結界もそんなものか…いよいよ勝ち目が薄くなってきたのではないか…？」「ぐっ…！」一旦引き下がる。「なかなか硬い結界だな…だが一刀流でなら打ち破れそうだ…が、その瞬間移動による《速さ》も強い…」「なかなか楽しそうじゃないか…だが、足元をすくわれるなよ…？」真三郎は、無須狩とは惹かれ合うものがあることを否めなかった。が、それが何か、まだ自分でさえ悟ることが出来ていない。第四十九話　　　時の覇者―炎陣サイド―　「逃げろー！ここから離れるんだ！」兵の絶叫を聞きながら炎陣はさらに炎を追加していた。「海龍…俺は本来ならこうしているべきだったんだよ…」炎陣は好きでセリベについているのではなかった。父親も随分と苦しんだものだ。その様子は炎陣の目に強く焼き付けられている。「だが、あえて反旗を翻すことはなかったが…あの小僧どもに唆されるとはな…あいつらも結構な器量人だ…海龍亡きセリベ…あるいは王朝を任せても差し支えあるまい…」過去に思案を巡らせていると、焼き払う森の中に一人の影が見えた。「炎陣…貴様どれだけ面の皮厚いんだ…よくも裏切ってすぐに顔出せたな…」「葛西か…少佐に敵うのか？」葛西の顔が歪む。笑止、と思っているのだろう。実際葛西は階級は炎陣より低いが、炎陣個人の武勇だけで築き上げられた地位ではない、と噂になっていた。舐めてかかっているのだろう。炎陣その人に対していい感情を持っている者は少ないはずだ。「外面だけだろう…一撃のもとに沈めてくれるわ！《岩鳳拳》!!」ものすごいスピードで岩の拳を打ってくる…が、炎陣には効かない。何しろ実体を持たない炎である。葛西は「やはりそうか…ならば、これで…！」葛西は第二撃を撃とうとした。「無駄だ。お前の結界が俺に通用するとは思えねえ…葬ってやるよ、この猛火で…《猛炎龍》!!」　真三郎に倒されて葛西は、ダメージはあまり負わなかったものの、勝てる気がしなかったので、敗走してきたのだ。それが今、倒された。炎陣はこの詳細を知っていないが、この場で知っている者が一人。「炎陣よ…よくもここまで非情になれたな…俺でもこんな仕打ちはすることないだろうよ…」声の主は朱鷺頼経。《大将》の肩書を持つ、操術系《時》の能力者だ。「俺は…生粋のお前とは違うんだよ!!」炎陣には複雑な過去がある。お前とは違うんだよ―と言うには言ったが、正直勝てる気がしない。海龍にはあるいは1vs4で勝てるかもしれないが、こいつに勝つためには純粋な《強さ》が必要になってくる。だが―「俺には策がある。お前に勝つための、な…」第五十話　　　名将戦記　炎陣は自ら言ったように、生粋のセリベの士ではない。いや、むしろその逆であったが、それでも譜代の葛西などより遥かに好待遇を受けたのは確かだ。それゆえに自らの力を自負する中堅どころの将は葛西の言うような噂を広め、信じることになったのだ。しかしそれは事実ではない。実際に、炎陣は親の将器を受けたのだろうか、圧倒的な強さを持っていた。しかし軍部はそれ以上に政治力を買い、官僚的な評価を与えたために噂が立ってしまったのだ。その背景も、この頼経は知っている。――――――　―――十数年の昔―――　名将正龍光宗の子、勝宗は汚名払拭に精力を尽くしていた。ラルストアは勝宗の寝返りにより瓦解し、戦うまでもなく、大国としてのラルストアは滅び去った。勝宗の存在があったからこそ滅びなかったということだろうか。　勝宗という、複雑な地位を持つ名将に、時の《大将》、海龍義満から声がかかった。海龍は勝宗を静かな一室に招き入れてこう言った。「例の兵器の話は覚えているな…？くれぐれも、裏切らぬよう…。」　勝宗は炎陣虎勝と名を変え、文武両道の名将として、名を挙げた。それは新参者かつ期待を寄せられていた風魔蘭次を凌ぎ、遂に少将までに上り詰めたのだ。少将になってすぐ、大木光という有望な人材が現れ、炎陣は常々目をかけた。その後すぐに木下真三郎という炎陣を引き付けてやまない人材が現れたのだ。海龍も同意見らしく、「あの二人…尋常ではないな」と言ったこともあった。―――そして―――　「寝返りを苦心の末うった者としては…お粗末な行為では無いのか…？《あれ》の話も聞いたのだろう…なぜ、今更このような醜態を見せる？今まで以上に色々な噂が飛び交うぞ？」頼経の諭す言葉にも一理はある。今まで、炎陣は苦労し続けてきたのだ。そして最近、ようやく安寧を手に入れられそうになったのだが…。目をかけた部下一人の反乱のためにそれを捨てようとしている。だが、もはや手遅れだろう。炎陣は内心、セリベとしては生きていけないと感じ始めていたのだ。だから、炎陣は真三郎達後輩の切り開く道を、後ろからついていこうと、固く思い始めていた。第五十一話　　　雷神の如し―――迅雷サイド―――　翠苑は、軍の中でも屈指の地位にある者である。当然、強い。が、勝敗を分けるのはその時の運だと、迅雷は知っている。「迅雷、か…。もう少しましな者を当ててほしかったがな…」迅雷はその言葉にキレて、殴りかかった。「《雷速拳》！」バリッ!!と音は鳴ったが、翠苑は動じない。結界で防御している。「ちっ…無理か…」「少将ともあろう者がお前なんぞに負けるものか!!出直してこい!!」翠苑はそう挑発する。「出直すものか…《雷電網》」雷の網で翠苑を囲う。「こんなもので勝てるとでも…？《‘雫の鏑矢’乱れ打ち》！」どうやら水一滴一滴を武器として四方八方に放ったらしい。異音がする。「結界も張ってあるか…手強い…」迅雷は結界で防ぎながら呟く。だが、どうやら派手な戦いにはなりそうだが…迅雷の頭からは作戦などもう既に消えている。「必ず、勝つ」これだけだ。　「少将…なかなかの強さですねえ」迅雷は嘲るかのように言う。「いやいや…敵に褒められるとは恐悦至極…」翠苑も負けじと皮肉を言う。「《雷猛一閃》」電気を纏わせた拳を一閃する…不意を衝けたからなのか、「うぐっ…!!」と倒れ込んだ。迅雷は翠苑がこれくらいで倒れるとは思っていない。「《雷獣…》」必殺の攻撃を繰り出そうとしたその時、「《水虎の猛り》!!」と翠苑が叫んだ。迅雷の側面から水柱が突き刺さる―「うぐっ…」水圧に耐えきれずに倒れた迅雷に翠苑は「ひよっこ風情が…お前を倒しても何も得られない…こんな負け戦、さっさと引けよ」と捨て台詞を放った。迅雷は諦めずに突撃をするが、翠苑はもう迅雷の手を読み切っている。おそらく何も得る事ができない、というのは言葉の綾だろうが、「こんな負け戦」というのは迅雷の心に深く突き刺さった。迅雷にとっても、この戦いは無用の戦ではないのか…というのが頭の隅をよぎるが、「いやさ、そんな事は考えずに突き進むが我が務め、考えるのは我らが棟梁だけよ…」と思い直した。第五十二話　　　天羽々斬―光サイド―　光は迅雷が混乱させた部隊に止めを刺す役回りだったが、今は天野那岐に足止めを食らっている。―まずい、俺のせいで作戦が崩れたら―とは思ったが、予想していたより遥かに潰走してくる部隊は無かった。迅雷が真面目に働いているとしたら考えられるのはただひとつ…「戦闘狂めが…」とは思うものの、そういう自分だって足止めを食らっている。まあ、ここまでの強者を足止めしていることにも大きな意味があるはずだ、と思った。　いや、実際「足止め」どころの騒ぎではなかった。下手をすれば負ける。「…貴様が参謀か…」「…!!…そうだ、いかにも俺が参謀格の大木光だ」そう答えるが否や、「ふんっ!!」と斬り掛かってきた。「うおっ…⁉」凄い気合だ。圧殺されそうだ。「全てを凍らせ我が手中に…《氷天八戒真斬》!!」触れるだけで凍るかのような冷気を纏わせ、渾身の力で斬りつける―「《破天舞》」ターン!!と衝撃が生まれる。「ぐっ…！」光の体にも強い負荷がかかった。およそ力負けしている。そして冷気は那岐の結界に弾かれている。―やはり足止め程度だ―そう思いながらも、第二撃を放つ―が、弾かれた。そして距離を大きく取る。「ふう…。こんなところか。永遠に眠ってもらおう」那岐は淡々と言い放ち、飛び上がって斬りかかってきた。「《天羽々斬》‼」　ザン‼と空を斬る音がして、―その衝撃波が―光の体に肉薄した。ギリギリのところで避けたが、斬撃は放たれ、光の体を掠めていった。「なにっ⁉…」飛ぶ斬撃。光も存在を知らない訳ではなかった。結界を飛ばす―簡単に言えばそんな感じだが、それが大きな斬撃となるには、途方も無い修練が必要となる。真三郎だって出来ないわけではないが、普通の人間にも切り傷程度しか与えられない。怪物というレベルの人間には全く通じないだろう。それを那岐は百メートルは離れている木を全て切り倒すレベルまで高めている。「これは勝てない…そう思っただろう？今からでも遅くないぞ、軍に帰れ。さあ…。」那岐は執拗に光に勧め続ける…。</title>
         <author>konnoharuto</author>
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         <pubDate>2022-05-30 02:34:23 UTC</pubDate>
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         <title>第五十三話　　　助力―真三郎サイド―　真三郎は無須狩に斬り掛かった。上段からの一刀流渾身斬りだ。「《高皇生霊斬」‼」「ぐっ…」無須狩はなんとか受け止めたが、ピキッ　と無須狩の結界にヒビが入った。「ぐあああー‼」結界に外的な力がかかってヒビが入ると、結界を作り出した本人に結界の受けたダメージがそのまま入る。「なるほど…結界はお前が上回っているか…。」無須狩はそう言うやいなや、「《空間移動》」殴りかかってきた。咄嗟のことで真三郎は対応出来ず、吹っ飛んだ。「…‼なるほど、それも戦いか…」真三郎としては一部下に圧倒されていては示しがつかないのだ。「《烈炎斬》」大自然の炎を纏って斬りつける―「《空間移動》」勝てる、と思っていたのだが、突如後ろから剣突が襲った。「何…⁉」真三郎は崩れた。真三郎の背から、人影が現れた。―炎陣サイド―　「‘それ’のことは心配ないさ。俺にはその自信がある。今となっては、だけどな。しかも…今となってはもう引き返せない。」炎陣はそう言い放つと、頼経に飛びかかった。「《猛り炎龍》」火力は本気だ。「ふふ…そうか。海龍はそんな風に、有能な人材を四方八方から集めた。その結果が、こうなるということなのか…。」「いやあ…これが《最終結果》という訳ではないぞ…もっと大きな戦い、いやさ《争乱》が起きるぞ…。」「そうなるかどうか…俺はじっくり見通したいものだ…」そう言って難なく防いだ。「ふふ…効かないか。こんな手は使いたくなかったが…《‘炎華’乱れ咲き》」蛍火のような火の玉が頼経の周りに発生する。「搦め手か…そうは行くかよ…」そう言って《飛ぶ打撃》を繰り出そうとした時。「はっ‼」と気合が頼経の背後を襲った。第五十四話　　　世に覇を唱える者の相―迅雷サイド―　「《電凶拳》」最大出力で翠苑に殴りかかる。が、　タン‼　と音がなって結界で防がれてしまった。「硬いな…能力だけじゃ破壊できないな…」迅雷は作戦を変更した。まだ実践したことのない芸当をしようとしている。「何をやっても無駄だと思うが…面白いな、お前は。何度でも立ち上がる。…俺達からしたら全く受容できないことだ。…ある意味、ここで反旗を翻さなくても今以上には大きくなれなかっただろうな、セリベの中では。ここで死なせることになんの躊躇もいらないとは、ありがたいことではあるが。」「そう言っていられるのも…いつまでかな？」迅雷はそう言って、「《雷速拳》」と一発くれた。「どうしたどうした。俺には効かないと分かってなおそれを打つのかね…？いやはや、凡人には天才の所業が理解できないというのはこういうことなんだろうなあ‼挫いてやるよその戦意‼《翠龍の一撃》‼」一本の巨大な水柱がもの凄い速度で襲う―「はぁっ‼」本来なら飲み込まれるであろう、迅雷の雷速拳が水柱を突き破った。「なにっ…⁉なぜそうなる…？」そしてその拳は翠苑を襲った。「ぐおっ…‼…ふう。一筋縄ではないようだな…。なぜ《翠龍》を突き破ったのだ？」翠苑は問う。強烈な自負心の持ち主だ。それを知りたいのは山々だろう、と迅雷はほくそ笑んだ。「結界だ。それ以外に考えられるか？」短く言うと、翠苑は理解したようで「ふん…手こずらせてくれるわ…」とパンチを打たれた胸部を抑えながら答えた。「これが最大火力というわけでは…ないぞ？」「そんなこと…言われるまでもない。お互い様だがな」言うと翠苑は右腕を高く掲げた。すると驚いたことにみるみる腕が膨張していく。「何を…？」「迅雷…知っているか？操術系が変術より強いと言われる所以…それは能力の影響範囲だ。そして夢想系が強い理由…それは体の体積、形を自由に変えられること。だがな…変術系にはもう一段階進化の余地があるんだ。俗に《覇相》というものだ…体の体積をなあ…体外にあるものと合体することで変えることが出来る。それによって体積が変えられるようになる。そして我が水の能力は空気中にたくさん存在する水蒸気を自由に利用できるゆえ能力の影響範囲も広い。そして俗に言う《流動系》の能力は形を自由に変えられる…これゆえに変術と操術の完全な優劣をつけられなかったんだ。結界が俺の方が格上である以上、お前に勝ち目は無いさ…。」「そんなこと…分からないだろう…」第五十五話　　　引き際―光サイド―　「俺は…俺の望み叶えるが為に生きて…真三郎についていこうと思っている。生き方を強制される軍に入ったのは不本意だ。勘違いするな‼」光が激する。那岐は予想通りと言った顔で、「ふふ…いよいよ物好きがいたものよ…それでも軍に入れと言われたとしたらどうする？」たらればの世界は存在しない…そう言っても良かったのだが、光は少し遊んでみた。「もし、か…俺を頂点に置くのなら軍に戻ってやってもいいが…？」「不相応なことを…吐かすな‼《天狼斬》‼」那岐が斬撃…というより刺突と言ったほうがいいような角度で斬りつけてきた。避けようとしたが少し遅れ、腹に少しばかり当たった。勿論結界は張っていたが、それをものともせずに掠った箇所に痛みが走る。「うっ…《氷塊翔》」空気中の水蒸気を凍らせ、大きな氷の塊を無数に作り出した。そしてそれを那岐に命中させる―が　ザン‼　と全て斬りつけ、斬れてしまった。まあ、変術系だから結界無しのただの氷だ、斬れないと興ざめでもある。「そんなものが効くと思うか？俺は任務を遂行するぞ。きっちり、な。《月読の波動》」　ゴオッ‼　と烈風が吹きつけ、光を襲った。「ぐっ…‼結界か…」光の読み通り、天の能力によって作り出された‘風’に結界を纏わせているのだ。「これで最後だ…《十束…」「待て天野」天野を呼び止める声があった。「これ以上何かするようであればこの俺が相手となろう…いい勝負になるとは思うが如何？」声の主は氷島宗戦。光の父だった。「親父…⁉何故…」問いただしたが「理由は聞くまでもなかろう」と謝絶されてしまった。およそ、この作戦が失敗する前提になっていたことに今更ながら気づいた。情けない気持ちがありながらも、同時に救われたという感情もあったのだ。「退き時だ、お前らは追撃などしないよなあ…？」宗戦の煽り文句に、天野は敏感に反応した。「いやあ…俺は任務を遂行するまで。そのためには情けは無用‼」「どこかに消えろ、光。死んでも知らんぞ」宗戦はそう言ったが、光はしばらく眺めることにした。第五十六話　　　これが最初の、灯火に吹き付ける風。そして、運命は揺らめき始めた。―真三郎サイド―　「何だその様は。…木下真三郎。」声をかけたのは正龍蘭千代。―またの名を戦女神と言い、常人からはかけ離れた力を持つ者だ。セリベの軍人としてかなりの地位を得ていた―というのは、真三郎が蘭千代を見かけた時に調べた情報である。「勇猛果敢ということで多少気にはしていたが…終いにはこんな大きな無意味な反乱を起こして…親が嘆くわ‼」最初の第一印象と変わらず、生粋の野武士という感じだった。「蘭千代、か…貴様はどういう料簡だ？まさか反乱に加担するわけでは…無いだろうな？いや、加担するとしても何ら不便は無いのだが…どうだ？敵ならば早めに叩くのが良いだろう…」無須狩は全く動揺せずに蘭千代に声をかける。言われて蘭千代は少し動揺していたが、ニ、三拍置いて「どっちに付くわけでもない…そう言うと加担と見なされるのだろうが…私がここに現れた目的はな。調停だ。」「⁉」無須狩も虚を突かれたようだったが、それは真三郎も同じである。「調停、とは…」「和解だ。それ以外に調停があるか」ぶっきらぼうに突き放されたが、まだ納得のいかない真三郎は重ねて質問した。「お前の、一存か？」これは無須狩も知りたかっただろう。蘭千代は答える。「教える必要がありそうだな…お前のことだ、そうしないと止めないだろう…。これを発したのは三英傑の一人だ。これは言うまでもなかろう…」真三郎は考え込んだ。あの二人がそれをするとも思えなかったから、もう一人の英傑か。しかしその‘力’である本人はこの場にいない。いくら常人離れしていると言っても、能力者ではない。小娘一人で無須狩を圧倒出来るとも思えなかったし、思いたくもなかった。が、その思いは見事に打ち砕かれる。「拒めばお前をも相手にしなければならないのか…それはちときつい。…よかろう、俺はその和解を呑む。して真三郎はどうだ？」蘭千代は強いと証明された瞬間だった。これゆえに、和解を呑まざるを得ないと思った。それに願ってもないことだとも、思い始めていた。しばらくして真三郎はこう答えていた「分かった、よかろう。他の二人にも言おう…。」第五十七話　　　“雲隠れ”光蘭―炎陣サイド―　「ぐっ…‼誰だっ…⁉」頼経が倒れ込む。かなり効いたようだ。「それもそうか、あいつならその位やれるか…」《あいつ》とは長光光蘭のことだ。今は確か、海龍の食客になっていたはずだ。「炎陣…この分の借りは返してもらうぞ…」光蘭がそう言う。続けて、「だがしかし、こんなことして良いのか？後でどうなっても知らんぞ？」光蘭は心配しているかのような言葉をかけるが、顔からして本気で心配しているとは思えない。「お前もな、光蘭」頼経が言った。「こんな反乱に手を貸して…こんなことしてお前の身がどうなっても知らんぞ‼」頼経が凄むが、「ふん、そんな危機今まで何度もあったわ…。こんなもの、小さき壁だ‼何を恐れることがあろう…。それより俺にとって大切なのは顧客の確保と今を贅沢に生きる金、それだけだ！忠義など知らん」頼経は押し黙った。光蘭の性格は有名だ。常に誰かの食客となっており、いざ戦となれば敵陣営から高値を提示されてそれに釣られて寝返りを打つ。そんなことが出来るような、炎陣から言わせれば恥知らずだ。しかしそれが出来るのはこの男が尋常ではない力を有する所以だ。変術系、“霧”の能力者。流動系だ。それだけではなく、個人としての戦闘能力はずば抜けたものがあり、海龍がその性格を知ってなお登用したのだ。それだけの力量があることは明白だった。「さてっと…決着をつけようか…。」頼経が構え直す。光蘭が強いとは言え、二人がかりで倒せるかどうかだ。「待った、頼経。どうだ、停戦というのは？」炎陣が突然持ちかけた。それには頼経は勿論、光蘭も訝しげな視線を送った。「…お前、何をいっているんだ？セリベを討つために俺を雇ったんだろ？」「まあ、そうだが…俺にも事情があってな…」「停戦というのはどういうことだ？」頼経が訊いてきた。「この戦いそのものを終わらせるということだ。勿論海龍も否とは言うまい…」炎陣の自信たっぷりの声音に疑問を呈したのは頼経だ。「和談を受け入れると思うか？あいつが簡単に…？」あいつというのは海龍だろう。「できるさ。こちらに話の主導権があるんだ。」と、炎陣は言った。光蘭はまだ腑に落ちていない様子だった。五十八話　　　大いなる力を持つ者の心得―迅雷サイド―　「その通りだ、迅雷」迅雷の後ろから声がかかった。「お前は…‼」翠苑の顔が凍りつく。「お前をそんな狂人に育てた覚えは無いが…多少は教養があるようで安心した」「親父…⁉なぜここに…⁉」雑魚敵処理に行っていたはずの光麟がなぜ…？そして行動を共にしていたはずの宗戦はなぜ一緒にいない？疑問を投げかけるまでもなく、答えをバラされた。「雑魚は一掃した…。というより皆逃亡したのだ。しかしそれでは足止めを出来なかった我らの面目潰れ。じゃによってこちらの戦線に帰ってきたらもうすでに劣勢。…講話を進めようということになったのだ。…まあ、ここまで察することも出来なかったお前はまだまだだな。」光麟にそう言われ、迅雷はぐっと押し黙った。「講話、だと…？そんな話誰が受けると…‼」「海龍は賛成するとのことだ」この光麟の一言が決定的になった。「…そうか、そうか…ならば受けざるを得まい。…どうせ拒否ったら貴様らまでが反抗するのだろう。…致し方ない…。」迅雷としては、戦いが終わるのは少し嫌だったが、負けて無用の命を落とすのは嫌だったので、負け戦を終わることが出来たのは必ずしも嫌ではなかった。迅雷は拳を収めた。―光サイド―　光の元に迅雷が矛を収めたとの報が来た。「ひとまず安心、か…」迅雷はその性格からしても、光から見たら強行に戦おうとするのでは、と危惧していたのでひとまずそれが回避できたのは安心できた。光がいるのは、海龍がいるという本陣である。「どうする光、ここで決起すれば海龍の首を取れるかもしれないぞ」宗戦が囁く。全く強かだ、と思いながら「それが成功することが出来ないから停戦するのでしょう」と返した。光は次に来るであろう真三郎の状況、そして講話へ対しての反応を知りたかった。もしも首謀者として辞めることが出来ないとでも言えばこの講話交渉は失敗だ。そのためにも光は、いや宗戦は真三郎の元に人を遣わせたのだ。第五十九話　　　禄寿応穏　かくして真三郎たちは各戦線にて一斉に休戦した。名義は休戦だが、実質的には全面降伏、なおかつ真三郎達の帰参が叶うという寛大な条件だった。真三郎達はこの条件には何か裏があるのではと考え、光が探ってみたものの、それらしい情報は見つからず、本当にこの条件で受け入れようとしている行動も見られたため、海龍を疑うのはやめようという話になった。光は海龍に取り次いでもらってその真意を聞き出そうとした時、答えたのが「世が平穏にあるならそれで良い」というものだった。これについて迅雷は「はは、建前だろう、どうせ。俺たちの力に目を見張って罪を許してまで欲しい人材だったんだろうよ。高くついたなあ‼」そう言って笑うのだった。真三郎もその陽気な言葉に「そりゃあ無くないか⁉」と笑うのだった。対して世間はこの事のあっさりさに驚きもしたが、そもそもがこの乱の規模がそこまで民間み及ぶまで大きくなかったので話題にはならなかったのだ、終戦の報もこじんまりと報じられた。　戦後、真三郎達は何事もなかったかのように、軍に再雇用（？）された。真三郎達にとっては何故今更受け入れられるのかが全く理解できていなかったが、他に生き方があるとも思えない。真面目に働き始めることにした。　しかし戦争に関わり、唯一と言っていいほど貧乏くじを引いた者がいた。ラルストアのNO.２である男だ。「あいつら…自分たちだけ格好つけて復帰とは…なかなかの鉄面皮じゃないか…」代々変わる王を支えてきた忠臣、という目で見られているが、実際は大きく違う。それらの王が何を言おうが、全て拒否し、全てをこの男一人の名の元に決めるのだ。主君を傀儡にしても、誰にも気づかれず、咎められないというところに、この男の強さがある。「まあ…それはこいつらを撃退してから…考えようか…」男の前には数多のセリベ軍が立ちはだかっていた。第六十話　　　守るもの、そして託された使命　真三郎は戦後、ただただ呆然の日々を暮らしていた。自らが反乱を起こした軍に出仕することも何か烏滸がましい気がして、しばらくは出てきていない。それは光も同じらしく、真三郎とは違って出仕はするらしいが、気は進まないらしい。かと言ってもう一度戦争を始める気も無いし、第一勝てるとも思えない。しかしこのままセリベに仕えていたとして、例え大功があったとしてもいつかこの日の咎めが来て消されることは容易に想像できる…というのは光の見立てだ。こういう時に主戦派になる、迅雷は幸いというべきか、セリベからの出兵要請が来ており、もはや戦っているので今はまだ戦いを望むことはないだろう。が、戦が終わり、戦うことが出来なくなった時、どうなるか分からない。いや、十中八九、さらなる戦いを望み、争乱が起きてしまうだろう。それだけならまだ、マシではあるものの…。果てには迅雷がその身を滅ぼすことになるかもしれない。いずれにせよ、いずれセリベとは決着を付けなければならない、そう感じた真三郎だった。　「まあ、今回は上手くいかなかったが…」いきなり切り出してきた話題はやはり戦争についてだった。今、真三郎の前には光麟が座っている。「いずれ決着を付けなければならない、…そう思っているだろう？」図星だった。まさにその通り、なのだが…その理由の三割位は迅雷なのだ。あまり感服するのも気に障った。「そこで…お前ら、少し腕を磨いてみないか？我らが指導してやろう…なに、迅雷なら大丈夫だ。我が手を回して戦争に出しっぱなしにしておく。そのうち強くなるだろうし、しばらくは落ち着いていられるだろう。「だから、どうだ？」真三郎にとってはこの話が悪いものだとも思えなかった。いずれ反乱を起こすかどうかは置いておき…。なによりこのままでは自分が守るべきものでさえ守り抜くことが出来ない。真三郎にとって、軍に入ってからの短い期間が、とても濃密なものであったと感じている。様々なものを手に入れて、失い、また知った…。　この歴史の流れに流されるだけでも十分面白いかもしれない。それもまた、一生として上等だろう。しかし真三郎“たち”には使命がある。そのことを忘れてはならない。第六十一話　　　次なる章の始まり　真海戦争から少し経ったある日のことだ。「真三郎…お前はこのままで良いのか？」と光から訊かれたことがあった。真三郎は少し迷いながらも、「当たり…前だ。あの時心を入れ替えたんだ…。」と言った。が、光にはその言葉が本心ではないことを見抜いている。「嘘をつけ…綺麗事言うな、真三郎。本心を言え」光に見事に内心言い当てられた真三郎に反論の余地は無い。「まあ…落ち着けよ。例え今、勇ましい事を言っても画餅に過ぎない。…悔しいし、皮肉なことだが、ここで力をつけ…」ここまで言ってから真三郎は自分の言っていることと行動が矛盾していることに気づいた。―光麟の修練の誘いを断ったのは自分だ―という負い目もあって、言葉尻を濁した。それに気づいてか、光は「まあ、そうだな…ここで力をつけるのもまた一計か…。」と呟いた。皮肉な言い方ではなかった。　それからは、迅雷は言うまでもなく、真三郎と光は軍の調練、そして戦闘に積極的に参加した。光麟には詫びを入れてたまに上達したかどうか、力を見てもらうようにした。また、次は何を意識すればよいかなど。闇雲にやっていくよりかは遥かに効率がいいかと思われた。―――――――――そうして、一年が経った―――――――――――</title>
         <author>konnoharuto</author>
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